多くのSF作品に登場するタイムトラベルとは本当に実現できるのでしょうか?
もしも未来や過去へ自由にタイムトラベルできるとすれば、私たち人類にとってはさまざまな可能性が広がりますが、現実にはなかなか想像しがたいもののように思えます。
過去へのタイムトラベルについてはまだ議論の余地がありますが、実は未来へいける可能性は科学では否定されていません。
しかし実際にどのようにすればタイムトラベルが可能になるのでしょうか?
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時間は絶対的なものではない
物理学では時間は四つ目の次元として説明されます。
簡単に言うと、この現実世界に存在するものにはすべて幅・高さ・長さがあり、これは三次元と呼ばれるものです。
その三次元に時間軸を足したものが四次元です。
私たちは常に、時、分、秒、日といった単位を用いて時間を計っていますが、だからといって時間に絶対的な速さがあるということではありません。
時間の流れはとらえどころのないものであり、言うなれば川の流れのようなものです。
水は場所や状況によってさまざまな速度で流れていきます。
時間もこれと同じで、絶対的な速度をもっているわけではないのです。
しかし、この相対性にこそ、四次元空間をこえたタイムトラベルへの鍵が隠されているのです。
偉人アルベルト・アインシュタインは「物質は時間を止めることができる」という仮説を立てました。
そして数々の研究の結果、彼の仮説は正しいということがわかりました。
物質が重ければ重いほど、その周囲では時間が遅くなります。
その証拠として、私たちの頭上を飛んでいるGPS衛星を見てみましょう。
各衛星には極めて高精度の時計が搭載されており、その時計は一日に310億分の1秒ずつ早く進んでいます。
もちろん、そのずれは毎日補正されているので問題はありません。
重要なのはずれた時計ではなく、地球の巨大な質量により、地上では軌道上よりも時間の進みが遅くなっているということです。
このことから考えると、ブラックホールとは、太陽数百個分もの質量をもつ巨大な自然のタイムマシンだと言うことができます。
有名な理論物理学者スティーブン・ホーキング氏は、銀河系の中心部にあるブラックホール付近の軌道に人の乗った宇宙船を乗せた場合、乗客たちの時間の早さは2分の1になるだろうと推算しました。
宇宙船がこの軌道上を5年間周回したとすると、地上ではすでに10年が過ぎていることになります。
つまり乗客たちは、かつて同い年だった人たちがすでに5歳年上になっている未来の地球に戻ってくることになるのです。
これはひとつの時空移動と言うことができます。
光速移動=タイムトラベル
未来に行くためのもう一つのヒントは、移動速度です。
もしも光速に近い速さで移動したとすると、必然的に未来へ移動することになります。
ホーキング氏は、この仕組みを理解するため、タイムマシンとしての超高速列車を考案しました。
この列車の線路を地球の周りに敷き、列車はどんどん速度を増しながら地球を周回していくとします。
物理法則により、列車が光速を超えることはできませんが、光速に近づくことは可能です。
列車は1秒間に地球を7周できるとした場合、乗客たちが1週間後に戻ってくると、地上ではなんと100年という長い月日が経過していることになるのです。
この場合、乗客たちの時間はブラックホールの軌道上よりもはるかに遅く進んでいます。
そもそもなぜ時間が遅くなるのかというと、いわゆる光速を超えさせないための自然法則だということができます。
例えば、この列車に乗っている乗客の一人が、光速を超えるため、あるいは追いつくために、列車の進行方向に向かって全速力で走り出したとしても、それは成功しません。
自然法則は光速を超えさせないために常に時間を遅くするのです。
この列車と似たものには、大型ハドロン衝突型加速器があります。
これは高エネルギー物理実験を目的として建設された、世界最大の衝突型円形加速器です。
陽子ビームを高速で正面衝突させることにより、高エネルギーでの素粒子反応を起こすことができます。
この実験により、光速の99%の速度で運動する物体の時間は遅くなるということが明らかにされました。
パイ中間子とは非常に高速で崩壊する粒子で、寿命はわずか4000万分の1秒という短さです。
しかし光速の99%の速度まで上げたとき、パイ中間子の寿命は30倍長くなります。
これも未来へのタイムトラベルの実現性を示す事実のひとつと言うことができるでしょう。
このように未来へのタイムトラベルがさまざまな角度から研究されている一方で、過去へのタイムトラベルは実現不可能だと考えられています。
過去へのタイムトラベルは、少し考えただけでもたくさんの矛盾が生じてしまいます。
その矛盾とは、結果が原因よりも先に起こってしまうことによるものです。
しかし、もし多元宇宙論に従うならば、過去に戻るのは可能ということになります。
ただし、戻ることができるのはパラレルワールドにおける過去であり、自分の行動が元の世界の自分に影響を及ぼすことはありません。
そして、パラレルワールドの過去へ移動した場合、元の世界には戻れなくなるでしょう。
五次元世界の可能性
現時点で理論物理においてもっとも揺るぎない理論とされているのはM理論です。
これは5つの超弦理論を統合するとされるもので、10の空間次元と1の時間次元、合わせて11の次元が存在するとしています。
さらには、10の空間次元と2の時間次元、合わせて12の次元が存在するとするF理論というものまでありますが、いずれにしても、今のところ私たちが感じられる次元は4つだけです。
しかし、2014年の「インターステラー」という映画では、映画制作者らのイメージする五次元の世界が表現されています。
「インターステラー」は、有名な物理学者キップ・ソーン氏の学術研究をもとに制作されたSF映画です。
監督と脚本家のノーラン兄弟は、この作品の中で、五次元とタイムトラベルを表現しようと試みています。
私たちの認識できる三次元空間は、時間軸に沿って、過去から未来への一方向にのみ進みますが、「インターステラー」では、映像で五次元を視覚化し表現しています。
主人公の娘の部屋が幾重にも折り重なってできた一種の超立方体となっており、この部屋のひとつひとつは、そこで起こっている一瞬一瞬が三次元として現れたものです。
そして主人公は重力異常によって過去の娘と交信することができました。
この設定は科学的説明に矛盾していません。
五つ目の次元は、ありとあらゆる出来事がばらばらに分かれたものが集まった、より高次の平面と呼ぶことができます。
現実世界の時間軸は無限に存在しているという仮説がもし正しいとすると、五次元では、無数の方向に広がっていくありとあらゆるパラレルリアリティのすべての時間軸を見ることができるということになります。
映画「インターステラー」は、まだ理論上でしか表現されていない世界を映像として視覚化したというすばらしい功績があります。
人類は未だ四次元以上の次元を見たり感じたりすることも、時間に影響を与えることもできません。
だからこそ、このような五次元という未知の世界と、時間を超越する重力をイメージし再現してくれたことは、大きな影響を与えることになったでしょう。
このような映画作品が、人々が議論したり科学に興味をもつきっかけとなるのは、非常に喜ばしいことです。
五次元での物理法則
五次元の世界に行くことができる生命体がもしも存在するとしたら、彼らの生活はいったいどのようなものになるでしょうか?
おそらく物理法則は違ったはたらき方をするはずです。
五次元では直線上の二点同士を近づけるために四次元の時空間が歪み、いわゆる時空間の歪みが起こると考えられています。
これなしではタイムトラベルの実現はおそらく不可能でしょう。
他の次元に行くことができる生命体にとって、時間はまったく違った意味をもつということは間違いありません。
逆に言えば、五次元の世界での物理法則についての研究が、タイムトラベルを実現する鍵となるかもしれません。
1500年以上も昔に生きていた哲学者、アウレリウス・アウグスティヌスは、時間というものについて次のような言葉を遺しています。「時間とは何なのかはわかっている。しかし時間について深く考えるとわからなくなる。」哲学的に考えれば確かにその通りですが、科学的観点から考えて、未来へのタイムトラベルが実現する可能性はゼロではないということです。今後の研究に期待したいですね。
参考 : independent, medium.com, wikipedia, など
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