私たちが古代の歴史を学ぶとき、人類は世界の四大文明を中心に進化成長したという通説は大前提のようになっています。
例えば、世界最古のピラミッドはエジプトのものであり、その文化が世界中に広まったもので、メソアメリカのピラミッドはエジプトのピラミッド文化の継承であるという考え方が一般的です。
しかし、それはひとつの仮説に過ぎないのかもしれないという可能性があります。
歴史について考えるとき、私たちはある一定の基準点を設け、その基準点から前後の歴史を考察するという作業を行います。
その基準点をどこに置くかということが問題で、私たちの設定する基準点とは、事実ではなく、あくまで仮説に過ぎません。
検証は仮説の上に成り立っていくものですが、この「基準点を定める」という作業に少しでも誤りがあれば、その上で導き出される答えは大きく狂ってしまうことになります。
人類の起源についても、「300万年前にアフリカで誕生した初期人類が、約180万年前にユーラシア大陸へ移動した」という基準点がそもそも間違っているとすれば、あらゆる歴史の見方が変わってくることになるのです。
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アメリカに存在した古代文明
国家としてのアメリカの歴史はわずか200年足らずですが、メソアメリカにはマヤ文明など世界の四大文明をもしのぐ文明が存在していました。
それにもかかわらず、国家として北アメリカの歴史が始まる約200年前より前の記録があまり残っていないため、アメリカにおける人類の歴史は浅いもののように思われがちです。
しかし、実はカホキアと呼ばれる巨大都市がありました。
その遺跡はイリノイ州セントルイス郊外のコリンズビルにあり、アメリカ先住民が築いたものといわれています。
遺跡には120ものピラミッド様のマウンド(土塁)があり、中でも遺跡の中心部分にあるモンクス・マウンドは、長さ316m、幅241m、高さ30mという大きさで、底面積の大きさではエジプトのピラミッドやテオティワカンの太陽のピラミッドを上回ります。
これらは神殿や墓として使用されたと考えられています。
カホキアは文字をもたない文化であったため、その詳細は今でもわかっておらず、どのように滅亡したかも明確に判明したわけではないため、北アメリカの古代の歴史は今も大部分が謎のままです。
人類の誕生の秘密
カホキアの文明は西暦600年以降のものとされていますが、北アメリカにはもっとずっと古い文明が存在したとも考えられています。
そこに人類の誕生の秘密が隠されているのではないかと考え、古代の北アメリカ大陸について研究・調査をした人物が、イギリスの作家、グラハム・ハンコック氏です。
グラハム・ハンコック氏の著書「神々の指紋」は世界中で人気となりベストセラーとなりました。
また、「人類前史 失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった」も、今までの歴史観を覆す内容となっています。
例えば、
・ホモサピエンスの「出アフリカ」以前、13万年前に北米大陸に人類が存在した
・古代エジプトとアメリカ先住民は「同じ神」を崇めていた
・アマゾンは謎の古代人が生み出した「人造ジャングル」だった
・ノアの洪水伝説、火の七日間などは1万2800年前、現実に起きていた
など、非常に興味深い内容ばかりです。
中でも『ホモサピエンスの「出アフリカ」以前、13万年前に北米大陸に人類が存在した』という論は、その後の文明を語る上でとても重要な事実となります。
2017年4月、学術雑誌「ネイチャー」に、ある研究が発表されました。
アメリカ大陸最古の人類が、これまで知られていたよりも10万年以上もさかのぼる、13万年前に出現していた可能性があるという内容です。
もしこの説が事実であり、13万年前にアメリカ大陸に人類がいたとしたら、そこには歴史を見ていくうえでどのような意味があり、どのような謎が隠されているのでしょうか。
初期人類はアメリカで誕生した?
通説では、人類が始めて地球上に出現したのはアフリカだと考えられています。
今から300万年くらい前にアフリカで誕生した初期人類、アウストラロピテクスは、その後、約180万年前くらいにユーラシア大陸へ移動したと考えられています。
そもそも初期人類の誕生については、アフリカという単一の場所で誕生したという「アフリカ単一起源説」と、ジャワ原人・北京原人・ネアンデルタール人などが地球上の各地域で同時多発的に誕生し現生人類に進化していったとする「多地域進化説」に分かれています。
「アフリカ単一起源説」をもとにして考えるならば、その後に起こった出アフリカで、人類の祖先はアフリカから誰もいない大地へと旅立っていったということになります。
人類の化石や遺物は、80万年前くらいからはじめてアフリカ大陸以外の場所からみられるようになります。
それは地続きの大陸間の移動に始まっています。
超古代の大陸は大きな地続きのものであり、プレートの変動などにより今のような形に分かれたというのが通説です。
大陸やプレートの変動を正確に知るのは難しいですが、初期人類はもとのつながっていた大陸を歩いて移動したと考えられています。
最初期のアメリカ大陸上陸についての具体的なデータは限られていますが、北米の中央部やチリなどの南米には、1万3100年~1万4600年前くらいの遺跡が存在しています。
そこから初期人類がどのように進化したのかを知ることは困難ですが、もし仮にアメリカ大陸の人類誕生がこれよりもさらに10万年も古かったとすると、その10万年で人類が遂げた進化は計り知れないものだと考えられます。
グラハム・ハンコックの著書に、『古代エジプトとアメリカ先住民は「同じ神」を崇めていた』という内容が記載されています。
これについても、現代の一般的な歴史のとらえ方を前提とすれば、「古代エジプトの信仰がオリジナルであり、そのあとにアメリカ先住民がそれにならった」という理解をしてしまいがちです。
しかし、アメリカの人類誕生が13万年前だと訂正された場合、その人類は進化スピードもかなり速かった可能性もあるため、どちらがオリジナルかはわからなくなってしまいます。
もちろん、いずれも確固たる証拠はなく、13万年前にアメリカに人類が誕生したという可能性だけに基づいた論ではあります。
文明という概念すらなかった時代の話なので、現時点ではこれ以上は憶測の域を出ることはできませんが、興味深い説です。
初期人類の絶滅とホピ族の伝承
現在の人類の文明は、実は1万年から1万5000年前が起源ではないかという説が、最近主流となっています。
これはグラハム・ハンコック氏の著書「神々の指紋」に端を発したともいえます。
当時の地球は氷河期の真っ只中であり、人類にとっては生存するのがぎりぎりの環境で、もちろん大陸間の移動など不可能だったと考えられています。
そのため、13万年前に誕生したとされるアメリカの初期人類も、ほとんどがこの時期に死に絶えた可能性があります。
氷河期を終えてから新時代が始まったため、それまでに繁栄した文明があったとしても、誰もその記憶を有していないということになってしまいます。
このように、基準点となる年代によって、歴史の見え方は大きく変わってきます。
また、ホピ族では、超古代の文明について次のような伝承があります。
・超古代の文明が大洪水で滅びるときを迎えたが、アントピープル(アリ人間)がホピ族と共に地下にもぐり、生き残る方法を教えた。そして洪水がおさまったあとに地上に出て再び人間が反映できるよう、知恵と技術を与えた。
このような伝承も、人類が初めに誕生したのがアフリカではなかったとすれば、意味が変わってくると考えられます。
人類の起源についてはさまざまな説があり、しかも手がかりが少なく確実性が低いため、事実と仮説、伝説や伝承が複雑に絡み合ってきます。しかし、さまざまな角度からあらゆる観点で歴史を研究していると、それぞれまったく関係ないと思われていた話が、突然結びつくということがしばしば起こります。歴史というものはひとつの大きな事実として存在するものですが、年代や地域によって細かく枝分かれして伝えられているので、枝先から幹にたどり着き根っこに到達することはとても困難な道です。あらゆる角度からさまざまな事象に対する検証を重ねていくことが、歴史の面白さといえるかもしれません。
出典/参考 : 世界史百科事典, ブリタニカ、概要, BBC, など
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