皆さんは、縄文時代に作られた土偶の写真を見たことがありますか?
子供の頃の社会科の教科書や資料集に載っていた写真が印象に残っている人も多いのではないでしょうか。
土偶と一言で言っても色々なタイプのものがありますが、中でも「遮光器土偶」と呼ばれるものは、確かに宇宙人のような見た目をしていて、およそ縄文時代の人間を模したものとは考えられません。
それでは、この土偶は宇宙人をモデルにして作られたのでしょうか?
今回は、この謎の多い縄文時代の土偶についてご紹介します。
なぜ土偶が宇宙人であると考えられるようになったのか
1973年の小学館の子供向け図鑑「なぜなに空飛ぶ円盤の不思議」の中に、「土偶は宇宙人か?」というページがありました。
そこには、土偶の一枚の写真と共に、その写真の6倍ほどもある大きなイラストで、土偶そっくりの宇宙人が描かれていました。
そして、その土偶の背後には空とぶ円盤(UFO)が、土偶の前には恐れおののいている様子の縄文人らしき人々が描かれています。
また、そのイラストの説明文には、「この土偶は今からおよそ三千年前のじょう文時代の遺跡から見つかったもので、何のために、どうしてつくられたのかはわかっていません。
(中略)大きな目は宇宙サングラス、耳にはじゅしん器、からだにはだぶだぶのうちゅうふくを着ている宇宙人に、この土偶がにているようにも思えますね」と書かれています。
当時これを見た子供達は、このインパクトのあるページを見て、「土偶は宇宙人なんだ!」と思いこんでしまったかもしれませんね。
さらに翌1974年には、立風書房の「追跡空飛ぶ円盤」という児童向けの本にも、「日本にもある古記録」というタイトル、「縄文時代にやってきた宇宙人」との見出しで、小学館の図鑑によく似たイラストが大きく掲載されています。
そしてこちらでは、空飛ぶ円盤から宇宙人が降りてくると、「これは、われわれがふだんおがんでいる太陽の神様だ!」縄文人は、そう考えたかもしれない、という内容の文章が添えられています。
さらにその文の後に、「その形を土で作り、子孫に伝えた、とは考えられないだろうか」とも続けられているので、土偶が宇宙人だと信じる子供がさらに増えたのではないでしょうか。
それでは、この時期に相次いで土偶が宇宙人ではないかと騒がれるようになったのは何故なのでしょう。
宇宙人到来の証拠としての土偶
エーリッヒ・フォン・デニケンという名前のスイスのSF作家が、1968年に「未来の記憶」と呼ばれる作品を発表しました。
このデニケンという人物は、太古の昔に宇宙人が地球に来ていて、ナスカの地上絵や、イースター島のモアイなどは全て、宇宙人によって造られたものであるという説を貫いていた人です。
彼はこの「未来の記憶」の中で、縄文時代につくられた土偶も、宇宙人の存在を示す証拠であると述べています。
デニケンのこのような主張に対して、科学者や考古学者は、論理的でないなどと批判しました。
しかし一方で、科学の力でなかなか説明のつかない古代文明の謎を、宇宙人の存在と結びつけた彼の考え方に魅了された人も少なくありませんでした。
宇宙人として描かれてきた土偶の正体
そのデニケンが、彼の作品の中で言及していた土偶は、青森県の亀ヶ岡遺跡などから出土した、「遮光器土偶」と呼ばれるタイプの土偶です。
これは、その特徴的な目の部分が、氷雪地帯で暮らすエスキモーやイヌイット族が目を保護するのに使う「遮光器」と呼ばれるゴーグルに酷似していたためにつけられた名前です。
「遮光器土偶」は、青森県の他にも、宮城県や岩手県など、東北地方で多く出土しています。
目の部分以外で特徴的なところに、乳房や、大きな臀部など、女性の身体的特徴を表していると見られる部分があります。
他にも、特に亀ヶ岡遺跡で見つかったものは頭部と呼べる部分がほとんど無く、首のすぐ上にある大きな目が異様に目立っているところが、強く印象に残ります。
体には、縄文時代の土偶らしく、縄で描かれた紋様が見られ、足など、体の一部が欠損しているものが多いため、完全な形で発見されたものは希少です。
土偶に関するその他の説
「遮光器土偶」は確かに、見れば見るほど宇宙人のようにも思えてしまう土偶ですが、縄文時代の土偶といえば、この他にもさまざまな形のものがあります。
それらについて、作られた意図や目的、用途などに関して、はっきりとした記録が残っているわけでもなく、正確なところは分かっていません。
その形状が女性的な特徴を表していることから、無事に出産できるようにとの祈りを込めているとか、子孫繁栄を願って作られたものである、という説もあれば、災厄を逃れるために、土偶の一部をわざと壊して、人身御供のように用いていたとも考えられています。
最近では、植物の精霊のような存在として作られたという新たな説も唱えられているようです。
参考 : Wikipedia, excite news, など
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