私たち人類は、この数世紀の間に、空を飛ぶことができるようになり、深海に潜ることができるようになりました。
上空には大気圏を飛び越し、宇宙空間にまで至るようになり、離れた惑星や小惑星への調査もどんどん進んでいます。
そして、太陽系内部については、かなり調査が進んできています。
ですが、宇宙には銀河は2兆ちかくあり、そのうちの一つである天の川銀河の中には、大陽と同じような恒星が2,000億近く存在しています。その中の1個の太陽系に私たちの地球は存在しており、いかに宇宙が広いかがわかります。
その広さから考えると、私たちが今宇宙について調査している範囲というのは、太平洋のど真ん中の海の中で、米粒一つ分くらいの大きさのエリアを捜索しているようなものなのかもしれません。
つまり、宇宙についてわからないことは、まだまだ圧倒的に多いと言えるのです。
今回は、既に調査されている太陽系においてでも、まだ人類が解明できていない謎について、人気サイエンス系チャンネル『SciShow』のマイケル・アランダ氏の話からご紹介します。
アランダ氏は、人類はこれまで宇宙探査機や宇宙飛行士、衛星などを宇宙空間に送り太陽系の解明を行ってきたことから、太陽系については多くのことがわかってきたと言っていますが、それでも我々が知らない事柄が数多くあると言っています。
今回のそのような中から未解明な謎について、5つの事例を紹介します。
太陽から発生される磁場の謎
星には磁場があるのですが、地球にも磁場は存在します。
地球では地殻から深さ2,900kmより深い部分を中心核と呼び、鉄を主成分とした金属が液体となって存在しています。
地球の自転に合わせて、その液体も回転しているのですが、金属は元々電子を多く含んでいるので、回転と共に磁気が発生し、磁場を生み出しているのです。
その結果南から北に向かって磁力が働くようになり、方位磁針は北を指すようになるのです。
この磁場ですが、太陽にも存在します。
ですが、地球のような惑星ではなく、ガスで出来た恒星です。磁気のでき方は、地球のものとは全く違っています。
太陽の場合、内部で水素原子同士が衝突し、ヘリウムに変わる核反応が起こっています。
この核反応により太陽内で発生した磁気は複雑な動きを見せます。
ですが、この磁場については、はっきりと解明されていないのです。
太陽がもつ11年周期の謎
太陽には磁場が強く温度の低い黒点という部分があります。
この黒点は、11年周期で増減することが知られています。
周期ピーク時は、『太陽極大期』と呼ばれ、太陽は明るさを増し、太陽の黒点も数を増します。
この時期に近づくと、太陽の磁場のラインはどんどん荒れた状態になっていきます。
その後、フレアが連続発生し、『コロナ質量放出』が発生すると、磁場は滑らかなものに戻っていくのです。
わかりやすいイメージでは、太陽の自転により、磁場の力線は綿あめを巻き付けるように、太陽の自転軸に巻き付く形になります。
回転によって次第に力線は引き伸ばされ、輪ゴムのようにある程度伸ばされると切れてしまうのです。
その際に爆発し、落ち着いた状態に戻るというイメージなのです。
このようなことは、太陽表面上で起こっていることで、実際に表面下ではどのようなことが起こっているのかというのはわかっていません。
そのため、磁場がどこから生じてどのようになっているのかと理解するまでには至っていないのです。
金星の気温はなぜ高い?
次に大きな謎をもっているのが金星です。
金星は、火星から内側にある地球型惑星であり、質量も同じような大きさを持っている惑星です。
液状の水が存在できる可住圏内にもあります。
そのため、金星は地球の双子星と呼ばれていました。
ですが、調査の結果、それほど地球と似ていないということがわかってきたのです。
金星の大気内では、新幹線の速さ並みの嵐が起きており、地球とは全く比較にならない温室効果が働いていることから、平均気温は462度にまでなっています。
現在調査によって、温室効果が発生した原因は理解されています。
それは、地球の気候変動の原因にもなっている二酸化炭素の仕業です。
金星の大気は、95パーセントが二酸化炭素です。
地球の場合、大気中に0.04パーセントの二酸化炭素が含まれているのですが、それでも現在の地球温暖化の要因となる温室効果を引き起こしていると言われています。
つまり、95パーセントの二酸化炭素がどのような意味を表しているのかは、想像できるのではないでしょうか。
ではなぜ、金星にこれだけの二酸化炭素があるのでしょうか。
科学者は、昔の金星には地球のように水もあり二酸化炭素もそこまで多くなかったと考えています。
ですが、気温の上昇により海は蒸発し、水蒸気も協力な温室効果を持っていることから、さらに気温が上がってしまったとみられているのです。
最終的には岩石に含まれている二酸化炭素までもが放出されるほどの気温に上昇してしまい、大気が二酸化炭素でいっぱいになってしまったのです。
ですが、なぜ、二酸化炭素は増えてしまったのでしょうか。
そして、そもそもなぜ気温は上昇したのでしょうか。
その原因は未だにわかっていません。
今後金星にまで至り、調査を進めることで新たなことはわかってくるかもしれませんが、それまでは解決しない謎のままなのです。
天王星に吹き荒れる嵐の謎
太陽系の惑星には、他にも嵐が起こる星が確認されています。
太陽系の外側で、土星の次に公転している惑星の天王星ですが、2014年の調査により、巨大なメタンの嵐が集団となっている部分がたくさんあることが発見されました。
これまで、嵐は太陽からのエネルギーにより発生すると見られていたのですが、この天王星で発生している嵐の発見は、その常識を覆えさせたのです。
太陽から地球までの距離の19倍ほど離れた位置を公転する天王星には、太陽エネルギーは十分に届きません。
そのため、そのような巨大な嵐を引き起こすエネルギー源はどこから来ているのかがわからないのです。
この嵐の原因も現在解明されておらず、もしかすると天王星の中心部は、予想されている岩石と氷からできた核ではなく、全く違った様相をしているのかもしれません。
天王星を覆う大気の影響で、熱量を生み出していることも考えられます。
実際には、大気内では想定されるより気温が高く、想像よりも暑いのかもしれません。
この発見された嵐は、天王星に大きな謎を残しているのです。
太陽系は殻を持っている?
太陽系の最外周を公転している海王星ですが、距離にして30AUの距離にあります。
その公転位置から50AUくらいまでの間の領域をカイパーベルトと呼んでいます。
ここは、小惑星や氷、ちりなどが密集したエリアとなっていますが、50AU辺りで突然なくなります。
その境の部分をカイパークリフと呼びます。
このカイパークリフがなぜできたかが謎となっているのです。
さらに謎となっているのが、オールト雲です。このオールト雲は、太陽系を取り囲むようにできた氷でできた岩の集合体だと予想されています。
ですが、実際に観測されたものではありません。
光がほとんどないところであるため、現在の地球人類の科学技術では調べることができないのです。
そのため、現状ではこのオールト雲の存在を証明する方法がありませんので、その全容も全くわかっていないのです。
なので、カイパークリフにつながるオールト雲を確認することは、太陽系外に足を延ばすためのスタートラインだといえるのです。
宇宙の神秘にはそれほど遠くの天体まで足を延ばさなくても、いくらでも遭遇することができることがわかりました。太陽系一つをとってもまだまだわからないことが多くあるのですが、宇宙の神秘を一つずつ解読することで、人類の宇宙科学の技術は着実に進化していっています。いつの日か、金星や火星を調査し、人が住めるようになる日が楽しみですね。
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