「私たちはこの世に本当に存在しているのか?」
「本当はここに私たちは存在していなくて、長い夢を見ているだけなのか?」
このようなことを考えたことがある方は、多いのではないでしょうか?
私たちの存在に関しては、はるか昔からたくさんの仮説がたてられており、人間そのものが実在しているかどうかは年月をかけて多くの人々が議論し合っていました。
そのような歴史を経て出てきた、比較的新しい仮説に関して、今回はご紹介させていただきたいと思います。
斬新な仮説
今回ご紹介する斬新な仮説を提唱したのは、世界的に見ても名門校であるイギリスのオックスフォード大学の哲学者です。
ニック・ボストロムらによって発表された説は、大変注目を集めています。
ボストロムの名は、彼が所属している分野では日本でも知られているほどです。
それだけの影響力がある人物らが、なんと「人の人生はない」と新しい説を主張しました。
彼によると、私たち人間はコンピューターを動かすためのアプリケーションプログラムであり、この世界はシミュレーションでできた世界だということになります。
もはやこの生活空間だけでなく、惑星も、宇宙までもがシミュレーションで再現できる世界であると考えています。
そしてこの仮説の状況と似ているのが、“ゲーム”です。
“ゲーム”の登場人物
私たちはゲームの中の登場人物の1人だと考えると、今回の仮説の説明がつきやすくなります。
仮に宇宙全体がシミュレーションであったとして、そのシミュレーションの世界の中に「人間」というキャラクターを置くとします。
しかし、彼らは勝手には動き回りませんので、ゲームをプレイする側が指示を出し、その指示によって動くようになるというわけです。
最初は与えられた指示を受けているだけの単純な存在は、次第に自身に組み込まれた指示、いわばプログラミングに従って行動するようになり、結果的にかなり複雑な行動や思考ができるようになる可能性があります。
そうして、社会などの複雑な構造を持つものが誕生するのかもしれません。
そうなると、シミュレーション世界に置かれた私たち人間は、徐々に複雑な思考をするようになり、自己を意識するようになっているという考え方もできます。
人生は実在するのか
先程ご説明した仮説に基づくと、私たちの人生が実在するのかどうかという問題を考えた時に、「実在しない」という可能性が見えてきます。
例えば、人間とは違った高度な知能を持っている存在がいたとすると、彼らによってこの地球はシミュレートされて、人間はシミュレーションの中で動く存在としてゲームのように指示を出されているのかもしれません。
そうすると、シミュレーションされている人というのは、ある特殊な世界の中で存在しているように見せかけているだけの存在なので、それらの人生は実在していないと考えることもできます。
このような話を聞くと「人生が実在しているのか」という疑問が一層高まりますが、現時点では解決する手段はなく、本当にシミュレーションの世界なのか、もしそうならそれを誰がつくったのかを知ることはできません。
ボストロムの主張
ボストロムはこれまでご紹介したような仮説を唱えていますが、「もしこの世がシミュレーションでないのなら」という仮定をした時の理由も考えています。
その理由はいくつかあり、1つは「シミュレートされた現実のような世界を生み出す現実社会の技術的レベルが進んでいない」、つまり宇宙までシミュレートできるような技術等を生み出す文明が存在していない、もしくは極めて稀だということです。
その場合、全てがシミュレーションできる状況でないということになるので、世界の一部、もしくはほとんどが現実という可能性があります。
もう1つの理由が、「興味やコストがなくシミュレーションしていない、倫理的にシミュレートできないなどの事情がある」というものです。
もしここがシミュレーション世界でないのなら、この2つのどちらかが真実だとボストロムは考えているのです。
私たち人間やそれを囲んでいる生物たちは、果たして実在しているのでしょうか?似たような仮説がいくつも大昔から唱えられていることを考えれば、今後もあらゆる可能性を検討し、様々な仮説が登場することでしょう。
コメント