このタコですが、世界では食べる国は意外と少なく、消費トップの国は日本なのです実際に、私たちの身の回りを見渡してみると、スーパーの鮮魚コーナーはもちろん、総菜コーナーではから揚げや磯部風の天ぷらなどがあったりします。
珍味コーナーではタコわさびなんかも売られていますよね。縁日や身近なおやつでもたこ焼きは人気です。
このように、タコは私たち日本人の食文化で切っても切り離せないものなのです。
このような背景から、タコを見てもなんとも思わないかもしれませんが、一度生きたタコをマジマジと眺めてみてください。
実際にタコを見てみると、その姿は異様に感じるでしょう。
日本人は宗教上の掟などもないことから、普通に食べますし、街中でも可愛く描かれていたりすることから、悪いイメージを持っている人は少ないでしょう。
ですが、海外の人では、デビルフィッシュと呼ばれたりするように、意味嫌われた存在になっている国もあるのです。
例えば、昔、火星人といえばタコのようなデザインになっていたり、クトゥルフ神話で登場する異形の神が、タコをモチーフに描かれていたりしています。
欧米諸国では、このように超自然的な存在としてイメージされたりしているのです。
そのような背景の中、2018年5月に、多国籍の科学者33名により、タコやイカのような多くの触腕を持つ頭足類動物の起源は宇宙にあるとする説が、学術誌である【Progress in Biophysics and Molecular Bio】に発表されました。
学術誌に掲載される論文ですので、『宇宙からの飛来説』には、しっかりとした科学的根拠があるのです。
この根拠となるタコの特徴についてご紹介します。
生物の誕生と頭足類の歴史
地球は今から46億年前に、数々の微惑星の衝突により融合し、その衝突エネルギーでマグマの塊となり、誕生しました。
このような衝突が繰り返されたのですが、次第に微惑星が周囲の原始惑星に吸収されていったことにより、地球に衝突する数も減り、地球の温度は徐々に下がり始めます。
温度が下がると、大気中に放出されていた水蒸気は雨となり、それが海となりました。
海は大気中の二酸化炭素を吸収し、温室効果が薄くなり、さらに気温が下がり大気圧も現在の水準まで下がっていきます。
35億年前には、バクテリアのような生物が誕生し、27億年前には光合成ができるシアノバクテリアが誕生します。
そうして地球の酸素濃度は上昇し、20億年前には酸素が紫外線と反応してオゾンを作り、現存のオゾン層ができていきます。
これにより、DNAを破壊する紫外線が減少し、陸上に生物が上がる環境が整ったのです。
その後、5億4100万年前に、古生代カンブリア紀に突入します。
この時代には、カンブリア爆発と呼ばれる生命の多様化が起こり、分類上の門がほぼ出そろったのです。
ただ、カンブリア爆発そのものも、宇宙から生命がもたされた証拠だとする説として唱える学者も多くいるのです。
その中でタコの仲間である頭足類も、アンモナイト類の祖先がカンブリア紀に生まれ、中生代に大繁殖します。
初期の頭足類は、オウムガイに近い硬い殻を持った生物だったのですが、タコやイカのような殻を持たないものの祖先は、遅れること2億7000万年前に突然現れたのです。
現存生物でもトップクラスの複雑な遺伝子
2015年、最新技術で行ったタコのゲノム解析で、現存生物トップの複雑な遺伝子を持っていることがわかりました。
実は人間の遺伝子より複雑だったのです。
まず、ゲノムについて説明しますが、これは、遺伝子と染色体を一緒にした言葉になります。
簡単に言えば、染色体というCDにDNAという記号で書き込まれた情報が遺伝子となります。
つまり、CDのディスクに書き込みが完了し製品化されたものがゲノムなのです。
このゲノムは、生物によって数が違います。
タコのゲノム解析は国際研究として、複数の大学で行われました。
日本では、沖縄の科学技術大学が参加しており、シカゴ大学、カリフォルニア大学、ハイデルベルグ大学などが参加して行われました。
この解析では、12種類の異なる品種のタコから採取した組織で実施されました。
タコのゲノムは、ヒトが持つゲノムの31億対には少し及ばず、27億対であることがわかったのですが、たんぱく質に関する遺伝子は、ヒトの2万5千に対し、3万3千と8千も多かったのです。
脳を構成する神経細胞であるニューロンでは、その遺伝子がコピー集合するクラスターの数が哺乳類の2倍近い168も存在しています。
また、タコ特有の遺伝子が数百単位で持っているということもわかっています。
この特有の遺伝子が多いことで、他の動物とは違った生態になっています。
神経の伝達や吸盤、身体の表面模様を変えたりできるなど、それらの遺伝子が重要な働きをしているといえるのです。
そして、タコには、ゲノムの中で移動することが可能な遺伝子が数多く存在しており、非常に複雑なゲノムの構造をしていることがわかったのです。
ゲノム解析を行った研究グループは、他の動物とは全く違ったゲノム構造をしていたことから、一番びっくりしたそうです。
これらの解明で、タコはなぜ、このような遺伝子構造をしているのかが問題となってきます。
現在もっとも可能性の高いとされる仮説は、タコやイカといった頭足類が凍結保存された状態で宇宙から飛来したのではという説です。
科学的実証と推測とが入り交ざった仮説のため、一種のオカルト的な要素があるように見えますが、30名を超す科学者が発表していることもあり、学術的におもしろい説となっています。
ただ、現状の技術では、宇宙から飛来した説を断定させることが出来ないのです。
遺伝子だけではない!タコの変わった生態
タコの遺伝子には、特有のものが数百単位で存在しているため、その生態も特殊だといえます。
まず、大きな特徴として、タコには足がありません。
俗に足と呼んでいる8本のものは、4対の腕にあたります。
逆立ちした人をイメージするとわかりやすいのですが、腕が下にあり、肩の部分に頭があり、その上に胴があり足がきます。
タコの構造はこのようになっており、普段タコの頭といっている部分は胴にあたるのです。
内臓も変わっており、タコには心臓が3つ存在します。
メインの心臓と、泳ぐ際に大量の血液を循環させなくてはいけないため、左右の腕に効率よく血液を流すための鰓心臓が2つあるのです。
そして、脳ですが、タコには9つも脳があるのです。
頭にある脳とは別に、それぞれの腕の付け根部分に8つの脳があり、腕1本ずつをそれぞれの脳が制御しているのです。そのため、タコの足は絡まることがないのです。
寿命についても調べ方が確立されておらず、木々が持つ年輪のようなものや、魚のうろこのようなものがないため、寿命が明確になっている種類は少ないのです。
今わかっているもので、イイダコやヒョウモンダコ、ワモンダコといった種は約1年と言われており、マダコでも1年半、長いもので3~4年と言われています。
このように、遺伝子的に優れた進化をしたタコでも、寿命は意外と短いのです。
このように、タコは他の生物と比べても、非常に発達した遺伝子情報を持つ生物です。私たち日本人は、食文化の中でおいしくいただいていますが、生物学的に宇宙から突然地球に訪れたエイリアンだと言ってもおかしくない生物だったのです。今後研究が進み、どのようにタコの祖先が生まれたかがわかる日が楽しみです。
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