「この人の傍にいるだけで、何だか体調が悪くなる。」そのように感じた経験はありますか?
私たちが日常的にそのように感じるとすれば、例えばある人の香水の匂いがとてもきつい状況や、あまりに人と密着していて体温が上昇してしまったために、頭がクラクラする状況などが考えられるでしょう。
しかし、入院しなければならないほどの体調不良を起こすことは、ほとんどの方が経験されたことがないのではと思います。
今回ご紹介するのは、ある衝撃的な事件についてです。
事件の主人公は1人の女性で、グロリア・ラミレス。
彼女を中心に引き起こされた事件は、強烈なインパクトを与えるあだ名を彼女に与えてしまうことになりました。
そのあだ名というのが「猛毒女」。
どうしてこのようなあだ名が付けられてしまったのでしょうか?
まずは、事件の内容からご紹介します。
謎に包まれた「血液」
グロリア・ラミレスさんは、事件当時31歳で、末期の子宮頸がんを患っていました。
そのような闘病生活の中、彼女は心停止を起こしてしまい、アメリカにあるリバーサイド総合病院に運び込まれることとなりました。
血液検査のために看護師が彼女の血液を採取したところ、なんと彼女の血液には白い結晶のようなものが入っていたのです。
異常はそれだけではありません。
血液採取とともにアンモニア臭が部屋を包み込みました。
その場に居合わせた医療者は、もちろんその状況に驚いたことでしょう。
しかし、事態はそれで終わりではありませんでした。
救急救命室のスタッフ37名のうち、23名もの医療者が、次々と自身の身体の不調を訴え、中には失神や呼吸困難などの症状が出るスタッフもおり、6名ものスタッフが入院することになったのです。
運び込まれたラミレスは、その日の夜に永遠の眠りにつきました。
死因は、子宮頸がんによる腎不全でした。
「猛毒女」が放った毒
ラミレス自身がどうして「猛毒女」と呼ばれるようになってしまったのか、それは彼女の体から出てきたと思われる物質が、有害ガスのような症状を引き起こしたことが原因だったのです。
一体、彼女の体内には何が存在していたのでしょうか?
症状に焦点を当てると、医療スタッフに生じた症状は農薬や化学兵器にもなるような化学物質、有機リン酸エステルによる中毒に酷似していました。
彼女の体から有毒なガスが出ていたのではないか、という考えに至る人もいました。
しかし、それを聞いて疑問を抱いたのが遺族の方々です。
遺族の方々は、有害ガスが一連の事件を起こしたとすることで、医療スタッフ側が自身の医療ミスを隠蔽しようとしているのではないかと考えたのです。
他にも、集団的にヒステリーを起こしたのではないかという考えもあります。
例えば、クラスの1人の女子生徒が体調を崩してクラスメイトの前で倒れたとします。
すると、彼女と同じような症状が伝染したかのように、同じ症状を訴えるようになるのです。
つまり、体調を崩した医療スタッフを見て、他のスタッフも倒れてしまったということを主張しています。
しかし、調査の結果はどれが原因かはっきりすることはありませんでした。
毒を自分で作った?
原因がはっきりしない中で、ある科学者グループが1997年に衝撃的な仮説を出し世間を騒がせました。
その原因というのが、ラミレス自身が作った毒のもとだと言うのです。
彼女は末期の癌で、癌による痛みは計り知れないものです。
そして、科学者グループが言うには、なんとラミレス自身が自家製の痛み止めを使っていたというのです。
自家製の痛み止めにジメチルスルホキシドが使われており、それが搬送時に使われた酸素と反応することでジメチルスルホンとなり、除細動器の電流で化学変化を起こして有害な硫酸ジメチルになったと、科学者グループは考えました。
これはあまりに衝撃的で納得するのが難しい部分がありますが、この説であれば血液内の白い結晶もジメチルスルホンによって説明できるのです。
ただ、やはり一般人が痛み止めを自作するというのも、少し難しいようにも思えます。
仮説があまりに少なく、まだ原因解明ができていませんが、だからこそ重要な事例の1つとして後世に語り継がれることでしょう。
事件から27年が経った現在も、未だ解明できていない未解決事件です。このような事例を残しておくことで、今後同じような事例が出た時に、謎が一気に解明されるかもしれません。
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