私たちの宇宙は、いくつあるか知っていますか?
当たり前に1つしかないと思う方も多いかもしれませんが、実はSF映画のみならず、科学的事実が 私たちの世界とは別の宇宙が存在することを示唆しています。
そこでは、私たちの行う選択 すべてにそれぞれ対応する別の現実が展開されているというのです。
この概念は「並行宇宙」として知られており、その並行宇宙の集団が「マルチバース(多元宇宙)」理論の礎となっています。
この発想は天文学界のみならず、アニメやテレビゲーム、TVドラマや映画にまで波及しており、皆さんご存知の方も多い作品で扱われてきたことで一般的に知られています。
今回は、謎に満ちた「マルチバース」に関する理論をご紹介します。
マルチバース理論って?
今から遥か昔、137億年前には、私たちの宇宙に存在するすべては小さな塵でした。
ビッグバン理論によれば、それから何かのタイミングで3次元の宇宙へと広がり、膨張したといわれています。
しかし、そのきっかけが何だったのかは未だわかっていません。
この最初の膨張に使われた膨大なエネルギーの温度が下がるにつれて、光が輝き始めました。
最後に小さな粒子が形成され始め、私たちが現在見ている銀河や惑星などになっていったと考えられています。
それでは、その過程の中で誕生した宇宙は私たちが知るこの一つの宇宙だけなのでしょうか?
現在の技術では、現状の宇宙探査によって見える宇宙しか想定し得ませんが、宇宙は湾曲していること、その外側もあるかもしれないことを踏まえると、宇宙がいくつかある仮説が出てくるのも不思議ではありません。
マルチバースがなぜ可能なのかを説明する理論は少なくとも5つあります。
無限の宇宙?
時空がどんな形をしているのか、実際にはわかりません。
一説によれば、それは「平ら」で、そして「無限に広がっている」とも言われています。
無限ということは、そこには複数の宇宙が存在していてもおかしくないとも言えます。
突き詰めると、宇宙自体が繰り返したり、やり直すことが可能であることになります。
なぜなら、粒子の組み合わせ自体は「有限」であり、ある時点で反復し始める必要があるからです。
泡でできた宇宙?
これまでお話しした「無限宇宙」に加えて、「永久のインフレーション」と呼ばれる理論がタフツ大学の宇宙学者によって提唱され、また別の宇宙が誕生する可能性があることを示しています。
この理論によれば、宇宙全体において膨張が止まっている箇所もあれば膨張が続いている箇所もあることで、数多くの孤立した「泡のような宇宙」が存在していることになります。
この説が面白いのは、宇宙同士が相互にリンクしていないので、私たちの知る宇宙とは異なる物理法則を持つ他の宇宙が存在し得るというところです。
並行世界の宇宙?
次に、“並行宇宙”という概念についてです。
いったん時空が平坦であるという考えに戻ると、マルチバースにおける可能な粒子の配置の数は「10の10乗の122乗」という範囲に限定されるといわれています。
よって、宇宙の無限の“区画“の数をもってすると、それらの中の粒子の配置は際限なく何度も、繰り返されなければならず、無限に多くの「並行宇宙」があることを意味しています。
複数の宇宙の各区画は、まさに私たちの宇宙と同じで、1つの粒子のみ異なるものや、いくつかだけ異なるもの、そして、私たちの宇宙とは完全に異なる組み合わせの区画まで同時に存在するのです。
かの有名な物理学者スティーブン・ホーキング博士がこの世を去る前の最後の論文もまたマルチバースに関わるものでした。
論文は2018年5月に発表され、それは博士がなくなった数カ月後でした。
その理論に関して、生前のインタビューでは次のように答えています。
「私たち研究チームは、私たちが現状知り得る唯一無二と思われる宇宙にのみ着目したわけではありません。
しかし、研究結果としては、多元的宇宙の著しい縮小、つまり、存在するかもしれない宇宙の数ははるかに少ないであろうことを示すに至りました」
枝分かれの宇宙?
ミクロな世界を扱うことで知られる「量子力学」では、ここまでに主張されたものとはまた異なる方法で「複数の宇宙が存在し得る」ことを示唆しています。
決定的な結果よりも「可能性・確率」という観点から理論が展開される量子力学において、確率論に従うならば、起こり得るあらゆる結果は、各個別の宇宙でも起こり得ます。
つまり、ある宇宙ではあなたはアジアのある国で働いていますが、他の宇宙では全く異なる場所にいてアジアにいる自分からは想像もつかないような境遇で生活をしているなど、互いに接触せずに異なる宇宙に枝分かれしているのです。
数学的宇宙
宇宙を数学で語るにあたり、数学が「宇宙を表す有効なツール」に留まるのか、または「数学自体が根本的な現実」と言えるのかということについては、長きにわたり議論が行われています。
もし後者が正解であるならば、私たちは、宇宙に隠された数学的性質を完全には理解できていないのでしょう。
その場合、この宇宙を構成している特定の数学的構造は1つだけではなくなり、実際には多様な数学的構造が独自の宇宙としてそれぞれ存在している可能性があるのです。
「数学的宇宙とは、人間の固定観念から完全に切り離した方法で捉えられる方法の1つなのです」と、この理論の提唱者は話しています。
「私が生み出したこの数学的宇宙の理論上では、宇宙自体が私とは独立して存在することができて、もし人間がいなくても存在し続けられるものであると信じています」
並行宇宙への反論
これまで並行宇宙論指示派の理論を挙げてきましたが、もちろん反対論者もいます。
2015年、天文物理学者のシーゲル氏は、時空が理論上無限に広がることには賛同したものの、いくつかの限界があるとも主張しています。
要点となるのは、この宇宙が“たったの140億歳以下”であるということです。
この歳月の限界からも、私たちの宇宙の存在期間が無限ではないということになります。
つまり、粒子が再配置するための可能性は制限されているということになるのです。
また、宇宙の始まり、ビックバンは指数関数的に起きたと考えられており、それは空間の固有のエネルギーが莫大な規模だったからです。
しかし、時間と共にこの増大スピードが明確に落ちており、ビッグバンで作られた物質の粒子は広がり続けてはいません。これが意味するのは、マルチバースが2つの要素を持つだろうということです。
それは”異なるインフレーション率”と、インフレーションに要する”異なる時間”です。
これは私たちがまだ知らない方の宇宙は”私たちの宇宙”と似通っていない可能性が高いということです。
シーゲル氏が主張するに「基本定数や、粒子と相互作用の可能な値が際限なく存在する可能性や、宇宙が複数存在するという解釈が実際に私たちの物理的現実を表せているのかどうか、といった問題を保留にしたとしても、実際には、あり得る結果の数は単なる指数関数よりも もっとずっと速いのです。
宇宙のインフレーションが無限の時間に渡り 起きたりしない限りは、私たちの世界と全く同じパラレルワールドはあり得ないのです」
私たちが地球から見ている宇宙のあり方や唯一無二かどうかという問題に関しても、見方を変えると色々なパターンがあり得ることがお分かりいただけたのではないでしょうか?他に宇宙が無い前提で、それを”限界”と見るよりも、唯一無二であることに意味を見出そうという意見もあります。例えばあなたの選択で夢が叶った場合、あなたはそれにたどり着くための選択をできた「唯一の人物」だということが重要なのです。
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