11月9日に公開された科学雑誌では、木星の周りを回転している衛星・エウロパの地表に存在する氷が放射線を浴び続けると、暗い闇の中でも美しい輝きを放つことが明らかになりました。
今回は、暗闇の中でも光り輝く幻想的な衛星エウロパについてご紹介いたします。
エウロパの地下には海が潜んでいる
木星の周辺ではおよそ80個ほどの衛星が存在しており、その衛星の1つとなるのがエウロパです。エウロパは木星が放つ磁気の影響で放射線を浴び続けていますが、研究者達が注目しているのには理由があります。
それは、地表が氷で覆われている衛星エウロパの地下には、地球に存在しているような海が潜んでいるかもしれないというものです。海があるならば、そこには生物が住んでいるかもしれないのです。
しかし、そこに生物がいるかどうかは、エウロパの地表がどのような物質でできているのかを研究しなければなりません。
地表の氷は塩水からできている?
エウロパの地表の特徴は、氷で覆われていること以外明らかになっていません。氷は塩水からつくられたものではないかといわれていますが、あくまで研究者達の推測であり、証明できる根拠はありません。ただし、放射線(高いエネルギーを持つ荷電粒子)と塩水からできている氷の地表がぶつかることで、何らかの反応や現象が起こるかもしれないとは考えられています。
地表についてはほとんどが明かされていない
放射線と氷の地表がぶつかることによって起こる何らかの反応や現象が、エウロパの地表の成分の謎を解き明かすキーとなるかもしれないといわれているものの、詳細についてはまだ明かされていません。
さらに、ハッブル宇宙望遠鏡といった宇宙関連の研究において数々の実績を残している宇宙望遠鏡も、エウロパの地表について観測することができていないそうです。
研究者たちが行った実験 その1
研究者達は、近い将来探査機が地表の観測を実施する際、高いエネルギーを持つ放射線を浴び続けた地表の氷がどのような見え方をするのか判断するためにシミュレートし、実験を行うことにしました。
それは、エウロパの地表を再現したサンプルと、木星が放つ放射線に近いメガエレクトロンボルトをぶつけ合うというものです。
すると、エウロパの地表は氷のほか、塩化ナトリウムや硫酸マグネシウムといった地球上でも普通に存在している物質からつくられているらしいことが判明しました。
実験の結果、氷は光り輝いた
研究者達ははじめに、普通の水からつくられた氷とメガエレクトロンボルトをぶつけ合わせました。その結果、メガエレクトロンボルトを浴びた氷は光り輝きました。
研究者達にとって、この結果は想像通りでした。放射線を浴び続け、高電子エネルギーを手に入れたとしても、その後すぐに低いエネルギーのままを保とうとするからです。
このとき、余分に手に入れたエネルギーは外へ放出され、それが光となって見えるのです。
研究者たちが行った実験 その2
次に研究者達が行ったのは、水と食塩を半分ずつ混ぜてつくるマイナス173度の氷と、メガエレクトロンボルトをぶつけ合わせるという実験です。
この実験では、驚くような結果を得ることができました。氷は、はじめに行った実験よりも暗い光を放ったのです。研究者達は、地表の成分が、放射線を浴び続けた氷の輝きを変えるとは思いもしませんでした。
暗闇の中でも光り続ける衛星
月は、太陽の光を反射しているためにあのような光を放っています。太陽が反射しない面は当然、輝きません。しかしエウロパは月とは異なり、いつも美しい光を放っています。
また、今回の研究によって地表の成分が光の輝きの加減を左右し、明るく光ったり暗く光ったりするほか、青白く光ったり、うすい緑のような色に光ることが判明しました。
この研究結果は、エウロパに生物がいるかどうか明らかにする鍵となりそうです。
暗闇の中でも光り輝く幻想的な衛星エウロパについてご紹介しました。10年以内には、エウロパ・クリッパーと呼ばれるNASAの探査機が打ち上げられる予定だそうです。もしもエウロパ・クリッパーが打ち上げられたならば、また新たな事実が判明するかもしれません。
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