月への人類到達を再度 目指す「アルテミス計画」や 2030年代に計画されている「火星有人飛行」など、興味深いプランが複数遂行中であることをご存知ですか?
もしかすると将来的に宇宙の移住先は月でも火星でもなく、準惑星“ケレス”になるかもしれないのです。
聞き覚えの無い方も多いと思いますが、ケレスが候補にされるにはそれなりに根拠がありそうです。
今回は、その背景を探ってみましょう。
準惑星ケレスとは?
ケレスは、火星と木星の間に広がる小惑星帯にある準惑星です。
準惑星というのは、比較的新しい分類の天体で、自身の重力によって球形を保てる質量を持っている太陽系8惑星以外の太陽系天体を指します。
惑星の分類から外されてしまった冥王星を覚えているでしょうか?冥王星も、準惑星の仲間といえます。
このケレスは、長い間 ただの岩塊だと考えられており、その詳しい性質などは解明されていませんでした。
準惑星ケレスに人間の居住空間を作る?!
フィンランド気象研究所の研究者は、このケレスの周りを回る永続的な人間の居住地を作ろうと提案しています。
2020年11月に閲覧できるようになった論文によれば、話題の人間の居住地、巨大サテライトの基本となるのは円形のフレーム部分だそうです。
フレームの両面に円筒状の構造物を並べて、磁力を利用したベアリングで直接接触しない形で合体するといいます。
人が住むことになるのはこの円筒構造の中で、これが回ることで地球と同じように重力を発生させることができます。
もし人口が増えれば、“円筒の家”をさらに増設すれば良いのです。
フレームにはさらに、各45度の傾きで2つの大きな鏡が結合されます。
これで太陽の光を集め、円筒の内部に人工的な日照りを作り出すのです。
なぜ月や火星よりも現実的なのか?
そもそもなぜ、火星よりも更に遠いケレスの軌道上に人間の居住場所を定める必要があるのでしょうか?
その最大の理由は、月面や火星の地表では重力が小さすぎることが理由の1つでしょう。
重力が低い環境に長い時間いた場合、人体へ悪く影響することがリスクとなります。
それは主に成長期の子供の筋肉や骨の発達に言えることです。
この問題の解決策としてあげられるのは、人工重力の生成です。
衛星や惑星の周りの軌道に人間の住居を飛ばし、機体を回転させることで実現します。しかしここにも問題があります。
いくつもの住居を無秩序に宇宙に浮かべると、その住居間の物資や人間の輸送に膨大なコストがかかるようになるのです。
対策としてロケット移動を試みたとしても、継続が可能な方法ではないでしょう。
ロケットによって噴出された原子は紫外線によってイオン化するため、やがて太陽風に吹かれて太陽系から出て行ってしまうのです。これは避けなくてはなりません。
人間の住居を巨大な“メガサテライト”に結合させる!?
ずっと宇宙で暮らすのならば、そのような原子の流出を極力抑え、できるだけ循環させる方法を編みださなくてはなりません。
そこで複数の住居を個別で浮かべておく代わりに、巨大なメガサテライトに結合させる案が出たのです。
そして各住居間の移動には、フレームを線路にして進む“リニアモーターカー”のようなものを利用するといいます。
これならば移動コストを削減することができ、ロケットのように原子が太陽系外に流出してしまうこともありません。
ケレスがメガサテライトに最適な理由とは?
ケレスがメガサテライトを配置する天体に相応しいと言われるのは、そこに窒素があるからです。
人間の呼吸では酸素が重要な役割を果たしている印象が強いかもしれませんが、窒素も住居内に大気を作るために欠かすことのできないものです。
短期間なら酸素だけでも人は生きていられますが、長期的に肺への悪影響が出る可能性は否定できません。
そして酸素だけでできた圧力が低い大気だと、火災の危険が増える他、生態系を維持する秩序が乱れます。
しかし窒素があれば、地球と同じような大気を作ることができるのです。
さらに大きさも重力も小さなケレスであれば、宇宙エレベーターを建造するのにも都合が良いと言えるでしょう。
ケレスの地上に長さ1000キロ少々の宇宙エレベーターを用意しておけば、ケレスの資源をメガサテライトに輸送する手間を大幅に軽くすることができるといいます。
もちろんメガサテライト自体、ケレスの資源を利用して建造する予定だということです。
快適で自然災害もない持続可能な暮らし
研究者がイメージしているのは、オランダをサンプルに、人口密度は1へいほうキロメートル500人(/km2)程度で、地球と似た自然環境があるにも関わらず、自然災害や危険な天候もない生活環境だといいます。
円筒の住居により、最終的には地球よりも広い生活空間を確保できるようになることが想定されています。
本当にそのような環境が実現するのであれば、地球派と宇宙派を選んで住むような日も来るのでしょうか?
ケレスの地下には「活動中の海」がある!?
そんな希望に満ちたケレスですが、表面に明るく輝く領域があると知られてきました。
これまでの観測では解明されていませんでしたが、NASAの探査機が調査したところ、塩の仲間「炭酸ナトリウム」であると判明しました。
炭酸ナトリウムは、地球では海底にある熱水噴出孔の周辺にある物質で、ケレスに塩水が存在していることが示唆されたとのことになります。
さらに最新の調査では、ここに地球以外では見つかっていない ハイドロハライト(含水塩岩)という鉱物も確認されたといいます。
ハイドロハライトは海水が存在することを示す明確な証拠となるため、さらに注目を集めています。
こうした調査からNASAの研究チームは複数の論文を学術誌で発表し、そこではケレスの内部温度が想定よりも熱いこと、地下に塩水の貯水層が存在しており、それが現在も地表に湧き出していることなどを報告しています。
岩石の固まりと考えられていたケレスに、生命誕生の鍵となる“海水”があったとは驚きです。
ハイドロハライトからわかること
塩水の貯水池、いわゆる海のような形になったのは、2千万年前クレーターが誕生した衝撃によるものだと考えられています。衝撃とその熱によって塩分と泥が地殻内部に取り込まれたのです。
海水は生命の誕生に不可欠な要素であるため、ケレスに生命体が誕生できた可能性も示唆しています。
今後、ケレスでは地球外生命体の痕跡を調査することも検討されているようです。
ケレスはどのように形成されたのか?
どうやって地下海水を維持する熱を保持しているか?
知的生命体の痕跡はあるのか?など、今後の調査に期待が集まっています。
人類の移住先といえば月や火星が現実的かと思いきや、“ケレス”と言う他の選択肢も出てくるとは驚いた方も多いのではないでしょうか?何にせよ、地球に住む以外の選択肢を人類が持てる日が無事に到来するのか、今後の研究結果に期待です。
参考 : worldtodaynews, futurism, nature, など
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