人々はこれまでの歴史の中で、実に様々な陰謀論を唱えてきました。
例えば、1963年に起こったケネディ大統領暗殺事件や、2001年のアメリカ同時多発テロ事件など、世界中の人々を震撼させた事件などにおいても、根拠のない様々な陰謀論が提唱されています。
また、現在世界のあちこちで猛威を振るっている新型コロナウィルスにおいても「5Gが感染を広げている」「コロナは中国政府がつくった兵器である」などの陰謀論が囁かれています。
今回は、なぜ人々は根拠のない陰謀論を唱えるのか、その理由についてご紹介いたします。
有害な陰謀論を唱える人々の出現
陰謀論には、半ば都市伝説じみたものがあります。
例えば、「政府は宇宙人が実在しているのにもかかわらず、その存在を隠蔽している」といったようなものです。
この類の陰謀論であれば、まだ可愛いほうでしょう。
しかし、新型コロナウィルスが蔓延している現在、有害な陰謀論を唱える人々が出現しています。
5Gのせいでコロナウイルスの感染が広がっているという陰謀論を唱える人々は、SNSでフェイクニュースを拡散するだけではなく、5Gタワーに火を放ったり、5Gタワーに勤めている従業員に暴力を振るったりなどの悪行をはたらきました。
また、新型コロナウィルスのワクチンについても「ワクチンが遺伝子コードを変換してしまうおそれがある」「ワクチンは人体に害のある物質を含有している」といった根拠のない有害な陰謀論を唱える人々が出現しています。
人間の脳のつくり
なぜこのような信ぴょう性に欠けた陰謀論を信仰し、唱える人々が現れるのでしょうか。
神経科学者のシャノン・オデール氏は、人々が陰謀論を唱える理由について、詳しく語っています。
「人間の脳は自らが生存できる道を選べるようにできています。
例えば、木登りの最中、今にも折れてしまいそうな細長い枝は登らないようにしますよね。
また、灰色の雲が空を覆えば、人々は嵐が来るのではないか?と予感します。
人間の脳は、普段の日常生活の中でも危険を避けることができるようにできており、細長い枝を登ろうとしたら落ちるというように、何をすればどのような結果になるのか、ある程度分かるようにつくられているのです」
脳の発達により無関係な事柄を結びつけてしまう
シャノン・オデール氏は、人間の脳が発達したことにより何をすればどのような結果になるのかというパターンを判断する能力があり、前頭前野や大脳皮質といった画像処理や知覚のための部分が高度な発達を遂げたと述べています。
人間の脳が高度に発達しパターンを判断する能力があがったことで、脳が異常なほどはたらき、無関係な事柄同士を結びつけてしまうのだそうです。
これが根拠のない陰謀論を信仰し、唱えてしまう理由だとシャノン・オデール氏は語ります。
ドーパミンの分泌量が多いほど、陰謀論を信仰する?
シャノン・オデール氏は、ごく一部の人のみにパターン判断能力の向上によって無関係な事柄同士を結びつけてしまう現象が現れる理由として、ドーパミンの分泌量の多さをあげました。
ドーパミンは、意思決定に重要な役割を果たす神経伝達物質で、過去に行われた研究でも、ドーパミンの分泌量が多ければ多いほど陰謀論を信仰しやすいことが明らかになっています。
さらに、陰謀論を信仰しやすい性格というのも暴かれつつあります。
特に、他人のことを信用せず常に他人を疑っており、この世界のことを危ない場所であると認識している人が陰謀論を信仰しやすい性格であるということが分かりました。ドーパミンは、このような感情を産みやすいのです。
自らが正しいと思う情報のみを収集する確証バイアス
ドーパミンのほかに、確証バイアスが陰謀論を信仰しやすくさせることも分かっています。
確証バイアスとは、社会心理学において自らが正しいと思う情報のみを収集し、反対する意見や批判は一切聞き入れないといった言動のことをいいます。
インターネットが普及した現代社会では、SNSで自分に都合のいい情報のみを収集することは容易です。
また、自分と同じ情報を信仰している仲間を集め、コミュニティを結成することも容易いでしょう。
その結果、フェイクニュースの拡散、放火や暴行などの犯罪行為へと繋がってしまうのです。加えて、その時代の雰囲気も陰謀論を信仰するかどうかに繋がるでしょう。
新型コロナウィルスが蔓延している社会は、暗く人々を不安に陥れているといえます。
そのような不安や無力感が、無関係な事柄同士を結びつけ、陰謀論の信仰に繋がるのかもしれません。
人々が根拠のない陰謀論を唱えてしまう理由についてご紹介しました。世の中には様々な陰謀論やフェイクニュースで溢れていますが、それらが本当に正しいものかどうか見極め、反対意見も聞き入れることが大切なことであるといえるでしょう。
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