人工衛星は、1957年にソビエト連邦がスプートニク1号を打ち上げたことがはじまりでした。それからというもの、数千にもおよぶ人工衛星が打ち上げられ、様々な研究に使われるようになりました。
それは、考古学の研究においても例外ではありません。上空から観察することによって、人類がどのような歴史を歩んできたかがはっきりと分かるようになったのです。
今回は、考古学における人工衛星の調査から判明した4つのことについてご紹介いたします。
その1 マヤ文明はなぜ滅んだのか?
グアテマラ北部に位置するペテン県には、マヤ文明の遺跡が存在します。研究者らは、遺跡の調査のためNASAのリモートセンシングを使用しており、マヤ文明が滅んだ原因について追っています。
そこで、NASAの考古学者であるトム・セーバー博士は、2005年から行われたSERVIR人工衛星プログラムによって集められた画像を分析し、マヤ文明が滅んだ原因は当時の人々が環境を破壊したからであるという説に確証を持たせようとしました。
すると、マヤ文明では、焼畑農業の影響で森林伐採が行われていたことが明らかになりました。さらに、森林伐採はバホと呼ばれる干ばつ、湿地の枯渇、温度の上昇を引き起こしていたことも分かりました。
人類は、同じ歴史を繰り返しているのかもしれません。
その2 モアイ像を移動させた手段とは?
チリ領イースター島に建つモアイ像は、1722年にヤーコプ・ロッへフェーンというオランダの海軍提督の手によって発見されました。
考古学者らは、イースター島に住んでいた人々はどのようにしてモアイ像の材料となった大きな石を運んだのかという点について疑問を持ち、研究を重ねました。
ハワイ大学のテリー・ハント博士とカリフォルニア州立大学のカール・リポ博士は、人工衛星が撮った画像を分析し、イースター島の人々は石に縄を括りつけたあと傾け、回しながら運んだのではないかとの結論を出しました。
この説の正確性を調べるため、重さ5トンにもおよぶモアイ像のコピーを制作し、そこに縄を括りつけて18人で引っ張ったところ、100メートル弱の距離をあまり力を使わず移動させることができたといいます。
その2 消失した砂漠のアトランティスの秘密
5000年前、オマーンの砂漠には、ウバルあるいはイラムと呼称された都市がありました。
その都市は、コーランと千夜一夜物語にも登場しており、乳香(主に香料の原料や漢方薬として使われた乳白色の樹脂のこと)の交易地として発展していました。
そこで、イギリスの考古学者が砂漠のアトランティスと呼んだ都市の秘密を暴こうと、研究者らは、シャトルレーダーシステムを使って調査しました。
すると、1984年に行われた調査により、古代の人々が歩んでいた隊商ルートから、都市が存在していた場所を導き出すことに成功しました。
その後、発掘調査によって複数の塔が並んでいる要塞が見つけ出されました。また、発掘された資料によると、当時の人々が堕落していたためにアラーが怒り、都市は地中に沈んでいったといわれています。
その3 古代エジプトの遺跡
エジプトの宇宙考古学について研究しているサラ・パーカック博士は、エジプトに遺っている様々な古墳の発見者でもあります。
人工衛星の画像を分析し、肉眼では確認不可能な電磁気スペクトルを調査することによって、「ここに遺跡が潜んでいますよ」というサインを見つけるのです。
さらにパーカック博士は「レイダース/失われたアーク」という映画作品に登場する都市タニスが存在していた場所を突き止めました。
タニスは複雑に入り組んだつくりをしている都市であるため、地上から場所を突き止めることは困難ですが、人工衛星の赤外線画像を利用し、分析することで分かるようになったのです。
考古学における人工衛星の調査から判明した4つのことについてご紹介しました。人工衛星は、モアイ像を移動させた手段や文明が滅んでしまった原因についても教えてくれるようになりました。人工衛星による考古学の調査は、もはや宇宙考古学と呼んでもおかしくはないでしょう。そしてそれらの研究は、マヤ文明が当時の人々の環境破壊によって滅んでしまったように、私たち人類に教訓をもたらしてくれるのかもしれません。
コメント