ストレスの多い現代社会において、うつ病の発症とそれによる自殺者の増加は一つの社会問題となっています。そうした中、アメリカではうつ病の発症率や自殺率が高い15の職業が発表されました。
もちろん、その職業に従事する人が必ずうつ病になるという訳ではありません。仕事には向き不向きがありますし、同じ環境でも個人差に依拠するところもあるでしょう。
今回は、あくまでも統計な指標としてストレスが多いと考えられる15の職業についてご紹介します。
教師
教師のうつ病の発症率は10%で、それほど高い数字ではないと思うかもしれませんが、教師がうつ病を発症するということは、教師個人の問題にとどまらず、学生にも強い影響を及ぼす可能性があります。
教師が高ストレス状態に陥る理由として、過剰な仕事量と仕事量に見合わない低賃金であることが考えられます。
法曹関係
法曹界でうつ病を発症している人は13.44%となっています。訴訟大国と言われるアメリカで、裁判の結果がすべて裁判官や弁護士などに委ねられていることから、高ストレス状態になりやすいのでしょう。
一方、アメリカでは弁護士の数が過剰となり、弁護士として一人前になるまでには相当な時間が必要なことから、弁護士資格の取得費用の借金が重圧にもなっているようです。
サービス業
サービス業の従事者も、うつ病を発症しやすい傾向にあり、美容院やクリーニング店では14%の人がうつ病を発症しているそうです。
美容師がうつ病を発症する理由としては、ヘアスタイルの仕上がりにクレームを言うお客が多いことや、美容師自身が格好の悪い髪型では出勤できないというプレッシャーを感じていることが考えられます。
クリーニング店の場合は、お客の服のクリーニングに失敗した時は寿命が縮まる思いをするでしょうし、修復もうまくいかずお客に怒鳴られた時のストレスは相当なものだと思います。
不動産業
不動産業界でうつ病を発症している人は15.66%となっていて、住宅市場が混迷しやすいという不動産業界の特徴が重圧になっていると考えられます。
売買契約が成立すれば高い歩合が得られる一方で、失敗すればすべてを失う可能性もあるため、強いストレスを感じる仕事であることが分かります。
公共輸送事業
公共輸送事業、中でもバスの運転手は、運転はもちろんのこと日々同じルートを繰り返し走るという単調な仕事であることや 迷惑な乗客への対応で相当なストレスを受けていると言えます。
バスの運転手に感謝の気持ちを持っている市民も それほど多くない現実を考えると、せめて良い天気の中でバスを運転したいと思う気持ちも理解できます。
飲食店従業員
飲食店の従業員では10%がうつ病を発症していて、女性従業員では15%にもなっています。理由としては、横柄なお客の対応をはじめ、給仕や皿洗いといった業務全般の負担の大きさが考えられます。
また、アメリカの場合はお客からのチップが収入の大きな要素となっていて、常に笑顔での接客が求められていることも大きな要因となっているようです。
看護師
人の命を救いたいという高尚な意志と向上心を持って勉強し、看護師としての使命を持って仕事に取り組んでいる人が多い中、看護師のうつ病発症者は11%という数字が発表されました。
この高い確率の理由としては、大きく2つの理由が考えられます。一つは、看護師が親身になって世話をしても感謝をしないどころか、それが当たり前だという態度をとる患者に応対しなくてはならないことが挙げられます。
もう一つは、患者の命に向き合う仕事である以上、患者が亡くなった時は その厳しい現実を自分の中で消化しなくてはならないことがあります。
ソーシャルワーカー
ソーシャルワーカーは、24時間対応が求められる仕事である上、虐待など想像を絶する経験をした子どもや若者を相手にすることで、無意識のうちに精神が蝕まれ、うつ病を発症する確率が高くなっているようです。
1998年の調査では、ソーシャルワーカーのうつ病発症率が48%という結果となり、多くの患者の苦しみに寄り添い、向き合うことで自分の心身が共に疲弊してしまうことが原因だと言えます。
農業
農業従事者の自殺率は他の職業と比較して1.32倍という高い結果が出たそうです。農業従事者が受けるストレスの主な原因として、予測も回避も不可能な天候を相手にしなければならないことが挙げられます。
その他、短期間に大量の農薬を使用すると、うつ病を発症する危険性が高くなるという研究結果も報告されています。
金融サービス業
私たちは、自分の家計のやり繰りや資産運用に頭を悩ませ、常にストレスを感じています。
自分のことだけで手一杯であることを考えると、顧客の資産運用についてアドバイスをする金融サービス業の従事者のストレスは相当なものだと想像できます。
実際、金融サービス業の従事者の自殺率は 他の職業と比較して1.51倍という高い結果が出ています。
獣医
動物が好きな人にとっては憧れの職業である獣医ですが、現実は厳しいようです。2010年に実施した獣医の心の健康調査では、心身の疲労から自殺を試みた経験があると回答した人が19%いました。
2012年の調査では、現役の獣医の3分の2がうつ病を発症していて、4分の1が獣医学校の卒業時に 自殺を考えたことがあるという結果も出ています。これは、学費の借金が重圧となっていると考えられます。
2011年には39人の獣医が自殺していて、他の職業と比較して1.54倍という高い自殺率となっています。
警察官
かつて警察官は尊敬される職業という印象でしたが、近年では市民のために命懸けで尽くすという印象がある一方で、市民からは相当反感を持たれていることも事実です。
そうした中、うつ病を発症する警察官が多くなり、自殺率は他の職業と比較して1.54倍、女性警察官に至っては2.03倍という高い結果となっています。
2012年に自殺した警察官126人は、平均勤続年数が16年、平均年齢は42歳、9割以上が銃器類での自殺だったそうです。
歯医者
歯医者の自殺率は他の職業と比較して1.67倍という高い結果となりました。
その主な原因として考えられるのは、歯科大学の卒業までにかかる費用の借金返済のために、自らの心身の健康を省みずに長時間働くことが挙げられます。
そして、歯医者は薬の知識も豊富であるがゆえ、自殺の手段の入手も容易なのかもしれません。
医師
医師の自殺率は他の職業と比較し1.87倍と高く、その理由としては、医師は薬物の知識が豊富で、入手も容易であることから、うつ病を発症すると薬を濫用(らんよう)する傾向があると考えられます。
実際、自殺の方法も、薬物の過剰摂取が他の方法と比較して4倍になっています。
更に、長時間労働を強いられ、高ストレス状態にありながら、周囲から「弱い」と思われるのを避けるため、精神科を受診しない傾向もあるようです。
軍人
2014年は273人、2012年は321人の現役の軍人が、2015年には、22人の退役軍人が自殺しています。
また、イラクとアフガニスタンに行った元軍人の二人に一人は、どちらか一方の任務で自殺を図ろうとした、もしくは自殺した者を知っているといいます。
軍は、軍人たちの自殺の原因を究明し、未来の兵士や退役軍人を助ける方法を見つけるための長期的研究に5000万ドルの資金を投じているそうです。
日本もアメリカも、うつ病を原因とする自殺者の増加が大きな社会問題となっています。職業の特徴も原因の一つかもしれませんが、社会構造の変化や格差社会の拡大、急速に進化し続けるネット社会など、多くの原因が複雑に絡み合っている上、プライベートに関わる部分も多いことから、なかなか根本的な解決策が見いだせていない現状もあります。心健やかに暮らせる日々を取り戻すためには、一人一人の言動も大切ではないでしょうか?
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