アメリカ国家安全保障局(NSA)および中央情報局(CIA)の元局員であるエドワード・スノーデン氏は、NSAによる国際的監視網の実在を告発したことで知られていますが、2017年に、日本とNSAが諜報・監視活動に関する密約を交わしていることや両者の関係が1950年代から続いていることを暴露しました。
また、日本はNSAに対して、日本国内に少なくとも3カ所の諜報・監視活動拠点を保持することを容認し、NSAの施設の管理・維持のために多額の資金援助を行い、その見返りとしてNSAは日本の諜報・監視活動に強力な装備を与え、様々な情報を共有していたと言います。
今回は、スノーデン氏が暴露したNSAと日本との関係、国際的監視網の構築について紹介します。
1950年代に始まった日本とNSAの関係
1950年代、第二次世界大戦後から日本に駐留していた占領軍も撤退し、日本が国家主権を回復していたにもかかわらず、米政府が日本国内に米軍の駐留を継続し、大きな影響力を維持している中、NSAと日本は諜報・監視活動に関する密約を交わしたそうです。
そしてNSAは、東京都港区の米軍の敷地内に「偽装事務所」を設置して、日本の諜報・監視機関と緊密な連携を維持するようになったのです。
その後「秘密裏の活動はもはや不要」と判断したNSAは、2007年に本部を東京のアメリカ大使館に堂々と移設したのです。
2007年の文書には「NSAと日本の関係は重要性を増している」との記載があり、更に日本を「諜報・監視活動の協力者として、次のレベルに」進める計画まで語られていました。
日本とNSAの関係を悪化させた大韓航空機撃墜事件
1983年9月、当時のソ連の領空に侵入した大韓航空007便をソ連防空軍の迎撃戦闘機が撃墜した「大韓航空機撃墜事件」のニュースが世間の耳目(じもく)を集めました。
ソ連政府の高官たちが航空機撃墜への関与を完全に否定し、韓国とソ連との間で 事件解決の糸口が見つけられない中、日本は米政府と極秘の諜報活動に関する論争に巻き込まれていました。
実は日本国内の諜報基地で撃墜事件の犯人が ソ連軍用機であることを証明する通信を傍受していて、それを記録したテープが存在していたのです。
米政府は、その記録のコピー入手を望んでいましたが、それには「G2 アネックス」という日本の諜報機関のトップの許可を得る必要があったのです。
政治的、官僚的な応酬の末、「G2 アネックス」はコピーの引き渡しを承諾し、米政府に送られた後、米国の国連大使 ジーン・カークパトリックが 国連本部に持ち込みました。
彼女は国連安全保障理事会で 大韓航空機撃墜の真実を隠蔽、言い訳に終始するソ連を糾弾し、「日本の協力で」証拠を入手した、と明言して、傍受した記録のコピーを再生したのです。
それは ソ連に反論の余地を与えない決定的な証拠でしたが、同時に日本の諜報能力を露呈する結果となりました。
これに対して 日本政府は不快感を示し「G2 アネックス」に米国との提携を控える旨の命令を発したため、1990年代初頭の冷戦終焉まで、日本とNSAとの関係は悪化したままでした。
NSAの最重要施設である三沢基地
現在、NSAは日本国内に複数の駐留施設を所有していますが、中でも最も重要な施設が、青森県の三沢基地にあります。
基地には「三沢セキュリティ・オペレーションズ・センター」が設置され、NSAはそこで「レディラブ」という作戦を遂行しています。
主な活動内容は、アジア太平洋地域で 衛星を介して伝達される通信、即ち電話、ファックス、インターネットなどの通信データをすべて傍受することで、2009年には、16基の標的衛星が発した8,000件以上の信号を傍受したそうです。
同時にNSA長官 キース・アレクサンダーが期待した「すべてを集める」という目標に応えられるように、NSAは自動的に大量の衛星信号を監視、処理する技術開発に取り組んでいたのです。
しかも、NSAの能力や活動は近隣の敵国監視に限定したものではなく、北アフリカ地域や 中東のインターネット利用を傍受できる「アパリション」や「ゴーストハンター」といったプログラムの配置にも取り組んできました。
また、NSAは技術の発展だけでなく、戦術も劇的に進化させてきました。
三沢基地は「クアンタム・インサート攻撃」という、監視対象者のインターネット上での習慣を監視した後、ウイルスを感染させるサイトやサーバーへと誘導し、感染したコンピューターは NSAにデータ送信するようになる 攻撃方法の実行拠点としても 利用されています。
日本政府からの資金援助
東京都福生市(ふっさし)近郊にある米軍の横田空軍基地は、NSAの監視活動で利用する器機の生産拠点としても重要です。
イラクやアフガニスタン、中南米、韓国、タイ、バルカン諸国、キプロスなどの各地で利用する監視アンテナの製造・修理のために、基地内に新設された サッカー場半分ほどの大きさの施設の建設費用約7億円のほぼ全額を日本政府が負担したとの報告があります。
更に、約4,000万円の人件費も日本が負担しているそうです。また、沖縄本島に作られたNSAの最新スパイ施設の費用 約5500億円も全面的に日本政府が負担しています。
こうした莫大な資金援助の詳細については ほとんどが非公開の上、在日米軍は日米地位協定で 治外法権となっているため、NSAの活動は日本の法の管轄外で行われていると考えられます。
これらの見返りとして、NSAは日本のスパイ訓練を実施したり最新の諜報技術を提供したりしています。
2ーー13年の文書には、NSAが「エックスキースコア」という、ネットワーク上での情報収集を広範囲に渡って行える 大量監視システムを日本の諜報機関に提供したと記されています。
日本を監視するNSA
日本とNSAの関係はかなり複雑で、1983年の大韓航空機撃墜事件以来、若干の不信感が尾を引いているようですが、それにはNSAが日本を監視対象に含めていたことも影響していると考えられます。
2006年の文書には、NSAが日本の外交方針と貿易の活動に関する情報を収集するために、日本を監視対象にしていたと示されています。
また 2010年にも米国内で 日本政府の官僚や日本銀行の関係者を監視できる 裁判所命令を得ていたことが分かっています。
これらのスパイ活動が実際に影響を与えた事例としては、2007年に開催された 国際捕鯨委員会の第59回 年次総会において、米政府は日本の代表団をスパイすることで 日本の交渉方針について事前に察知していたそうです。
この会合では、商業捕鯨を禁ずる モラトリアムを終了させたい日本政府に米政府が反対し、日本代表団は国際捕鯨委員会からの脱退を示唆したと伝えられています。
世界中を監視するシステムで世界統制を目論むアメリカ
ロシアに亡命したスノーデン氏が 2014年に流出させた文書には、背の高く色の白い宇宙人が地球にやって来て、1930年代には ナチス・ドイツに潜水艦技術を教え、1954年にはアメリカでアイゼンハワー大統領と対談し、現在のアメリカの基盤となる制度を設けた などと書かれていたそうです。
また スノーデン氏によると、アメリカがこの制度のまま世界中を監視し、情報統制の行える監視システムを作る事が「彼ら」の世界統制への「最終局面」なのだそうです。
日本政府がNSAから、監視システム「エックスキースコア」の提供を受けて、コンピューターネットワークから情報収集を実施していることが事実であれば、日本国憲法に違反する可能性があります。私たちは、日本政府による監視活動について もっと関心を持った方が良いのかもしれません。
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