ワームホールとは、異なる時空同士を繋ぐ時空のトンネルのようなものです。
カール・シュヴァルツシルトというドイツの物理学者が唱えたワームホールですが、その存在は未だ確認できておらず、物語の中の理論でしかありません。
また、一般相対性理論によると、ワームホールの存在は認められていないそうです。そこで、プリンストン大学に所属する研究者らは5次元宇宙理論を利用し、人がワームホールによって時空を越えることができるかどうかということについて調査しました。
今回は、ワームホールと5次元宇宙理論についてご紹介します。
ワームホールとは何か?
ワームホールは、20世紀前半にカール・シュヴァルツシルトが唱え始めた考え方です。
カール・シュヴァルツシルトは、ドイツ生まれの理論物理学者であるアルベルト・アインシュタインの場の方程式の答えとしてワームホールの理論を編み出しました。
「シュヴァルツシルト解」はブラックホールの存在を証明する基礎的な理論といわれています。そこで考えられたのが、異なる時空同士を結ぶブラックホール、つまりワームホールです。
ワームホールは「アインシュタイン=ローゼン橋」とも呼ばれています。
なお、ワームホールという名前はジョン・アーチボルト・ホイーラーというアメリカ合衆国の物理学者が、異なる時空同士を繋ぐ3次元の管のようなものであると説いたために名付けられました。
ワームホールを通過するためのマイナスのエネルギー
ワームホールを通過し、異なる時空を行き来することはかなり難しいといわれています。
しかし、フアン・マルダセナ氏とアレクセイ・ミリーキン氏が執筆した論文「Humanly Traversable Wormholes」によれば、マイナスのエネルギーがあればワームホールを通過し、異なる時空を行き来することができるそうです。
このマイナスのエネルギーは、古典物理学では存在を証明することは不可能ですが、量子物理学であれば存在しても何ら不思議ではないといわれています。
マイナスのエネルギーとカシミール効果
具体的を出しましょう。
カシミール効果では、マイナスのエネルギーが維持された状態が確認できます。粒子が平らな空間に入り込み、始めの場所に再度現れることで環の中の行き来が可能になるという仕組みが、真空のエネルギーがマイナスのエネルギーに代替されるのではないかということを表しています。
アレクセイ・ミリーキン氏とフアン・マルダセナ氏は、このマイナスのエネルギーがワームホールの存在を証明しているのではないかと考えました。
5次元宇宙理論とワームホール
このようなワームホールは、素粒子物理学で頻繁に出てくるような物質でつくられています。しかし人が通過できるようにするためには、サイズが大きいものでなければいけません。
アレクセイ・ミリーキン氏とフアン・マルダセナ氏が執筆した論文によると、5次元ワープ幾何学理論やランドール=サンドラム2モデルなどで使われる「5次元宇宙理論」でなければ、人が通過することができる大型サイズのワームホールを証明することはできないそうです。
5次元宇宙理論は階層性問題を解き明かすために生まれた理論で、認識されていない物理さえも表すことができます。
ワームホールを通過する時間
ワームホールを通過する時間は、通過している本人にとっては一瞬です。しかし、一般相対性理論に沿って考えると、通過するところを見ている者にとっては長い時間に感じられるといわれています。
例えば1万光年分動くとき、通過している本人は1秒、通過しているところを見ている者は1万年に感じられるということになります。
なお、ワームホールは重力によって通過することができるため、宇宙船などで通過するときは燃料は必要ありません。
ワームホールと5次元宇宙理論についてご紹介しました。時空同士を行き来することができるワームホールは一見魅力的なものに見えますが、その一方で危険も伴うといわれています。しかしワームホールが実在し、危険もないのであれば私たち人類がワームホールを通過することができる日もそう遠くないかもしれません。
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