近年は、科学のあらゆる分野から大きなニュースが伝えられた年でした。天文学や生物学、考古学、量子力学などの分野で、過去の常識をくつがえすような出来事があったのです。
今回は、科学界のニュースの中でも特に衝撃的な10大ニュースを ご紹介いたします。
ブタの体内で人間の細胞を育成
実は、ブタ胚の中で人間の細胞を育成する事に成功しているのです。その目的は、移植用の組織や内臓を発達させる方法を探る事にあります。
このプロジェクトでは、まずラットの細胞がマウスの胚に移植され、そのハイブリッドが作り出されました。その後 同じ技法で、ヒト細胞をブタ胚に移植し、その中でヒト細胞を育てる事に成功したのです。
一方多くの専門家が、この技術によってヒトと動物のキメラが作られる事を懸念しています。
病気の原因となる遺伝子を除去する事に成功
遺伝子編集技術「CRISPR-Cas9」を用いて、病気を誘発する遺伝子の除去に成功したというニュースがあります。
具体的には、突然変異によって心疾患を引き起こす遺伝子をヒトの胎児から取り除き、健康な遺伝子のコピーと入れ替える事に成功したのです。
大きな成果である一方、専門家や倫理学者の間では「優れた人間を作り出そうという試みではないか」との声が上がっています。一方、CRISPRを病気の診断ツールとして使うための研究もあります。
突然変異によってがん細胞などの発生を招く遺伝子があるのですが、CRISPRを応用する事でそうした遺伝子の情報を探る事が可能です。
光子の瞬間移動が実現
人間をどこかへ飛ばす事はできませんが、素粒子の1つである光子なら、地上から1400km離れた人工衛星に瞬間移動させる事が可能なのです。
光子そのものを転送するというよりは、その状態を転送する技術です。これを実現するために「量子もつれ」の現象を利用します。
量子もつれは、同じ時空で作られた2つの粒子の片方の状態が変化すると、もう片方も一瞬で変化するという現象です。中国の研究者は、量子のもつれた光子を4000ペア作り、片方を光のビームで人工衛星に発射しました。
その後、地上から送られてきた光子の量子状態を人工衛星が検出する事で、光子の瞬間移動が実現したのです。またこの技術を応用する事で、ハッキング不可能な通信ネットワークの構築が期待されています。
史上最大級の氷山が誕生
南極半島で崩壊したラーセン棚氷(たなごおり)は、約1兆トンという記録史上最大級の氷山となり、ウェッデル海を漂っています。ラーセン棚氷は大きく姿を変えている棚氷です。
ラーセンA、ラーセンBと呼ばれる部分は、それぞれ1995年と2002年に分離しました。
その後ラーセンCにも亀裂が見つかり、2017年にはその部分が完全に割れたのです。専門家は温暖化との関連を考えつつ「いずれラーセン棚氷は分離する運命にあった」と述べます。
棚氷は、海に突き出るような形で発達し、自然に崩壊するものであるためです。
新大陸発見
2017年、国際的研究チームは新たな大陸「ジーランディア」を発見しました。それは数百万年前にオーストラリアから分かれたもので、大陸の9割が海に沈んでいます。
研究チームが岩石や化石などのサンプルを回収し調べると、これらから浅い海の生物の体や、陸の植物の花粉や胞子が発見されました。こうした事から、かつてジーランディアが海上にあった事がわかったのです。
またこの大陸の化石記録は、地球のプレート運動や気候システムに関する研究、加えて、それらの将来的な変化を予測するコンピューターモデルの構築にも役立つでしょう。
人類の始まりはもっと昔だった?
かつてエチオピアで発見されたホモ・サピエンスの化石から、現代人は15万年前から20万年前に誕生したという説が有力でした。
しかし2017年、30万年前のホモ・サピエンスの化石がモロッコで発掘された事で、人類の誕生は従来の説より10万年昔である可能性が出てきたのです。
モロッコとエチオピアが離れた位置にある点から、現代人生誕の地はアフリカの特定のエリアではなく、アフリカ大陸全土に及んでいたと考えられています。
誕生直後の人間は大陸全体を移動し、狩りをして道具を作りつつ新しい認知スキルを身に付け、社会活動をするようになったのでしょう。
ギザの大ピラミッドに謎の空間
2015年に開始された「スキャンピラミッド」プロジェクトによって、ギザの大ピラミッドの内部に空間がある事が判明したのです。
スキャンされた画像からは、空間の長さが30m以上ある事、そしてその空間は真下にある大回廊と構造が似ている事がわかりました。こうした新たな内部構造の発見は、19世紀以来です。
木星と土星の研究
木星探査機ジュノーは、木星の常識をくつがえしました。木星の縞模様は決して全体には広まっておらず、また極地にはアンモニアの台風が生み出した渦巻き模様があったのです。
また、地球のものとは性質が異なる壮大なオーロラが現れる磁気圏の情報も得られました。一方土星の研究については、土星探査機カッシーニが大きな役割を果たしています。
カッシーニのお陰で、人類は土星の輪の構成や、居住可能な範囲について分析する事ができました。加えて、土星の衛星や太陽系全体に関する理解も深める事ができたのです。
トラピスト1を公転する7つの地球型惑星を発見
地球から39光年離れている恒星「トラピスト1」を公転している地球型惑星が、7つも発見されたのです。
トラピスト1は硬い地面のない木星や、その衛星であるガリレオ衛星に似ていますが、発見された7つの惑星には地面があるのです。また7つのうち3つの惑星は、生命体が存在し得る「ハビタブルゾーン」にあたります。
中性子星同士の衝突で地球200個分の金が生まれた?
2017年は、2つの中性子星の衝突が観測された年でもあります。衝突現場は、地球から1億3000万光年離れた場所です。
衝突に伴い重力波が放出される事は、アインシュタインが予言していたため、それが地球に届く前に専門家は検出器を準備できました。
検出器が重力波をキャッチすると、世界中の先端望遠鏡で高エネルギーの光バーストが捉えられ、更に数時間後、空に赤外線と紫外線を放つ明るい点が現れたのです。数日後にはX線と電波も観測されました。
こうした観察は「キロノバ」仮説に関する知見をもたらすのです。この仮説では「中性子星の衝突によって金や銀、ウランといった重元素が吐き出されている」という見解が示されています。
研究者によれば、衝突によって地球200個分の質量を持つ金が作られているようです。
これらの10大ニュースからわかるように、近年は科学の分野で大きな変化があった年なのです。こうした点から、近年は世の中のありとあらゆる面で変化が起こったのだと認識できますね。
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