イギリスの宇宙・物理学者であるロジャー・ペンローズは、広大な宇宙にはブラックホールをエネルギー源として使う文明がある可能性について主張しました。
彼が論文を公開した1969年ではこの研究は推測の域を出ないものでしたが、それからおよそ50年ほどの月日が経過すると、研究の正当性が認められるようになりました。
今回は、ブラックホールをエネルギー源とする文明と、ペンローズ過程についてご紹介していきたいと思います。
ペンローズ過程とはなにか
ブラックホールからエネルギーを獲得する過程のことを、ペンローズ過程と呼びます。
ブラックホールの外側には、エルゴ領域という楕円形のエリアが存在していますが、エルゴ領域にはエネルギーが負へと変化する軌道があります。
これによりブラックホールからエネルギーを獲得することができるといわれています。
ペンローズ過程についてもっと細かく見ていきましょう。
初めに、エルゴ領域に物体を落下させ、それを2分割します。
そして、2分割した物体をブラックホールが回る向きとは反対に進行させていきます。
反対に進行する2分割された物体の1つは、負のエネルギー軌道に乗り、その後、ブラックホールに落下させます。もう一方の物体は、エルゴ領域からエネルギーを獲得するようになります。
すると、獲得した物体のエネルギーは非常に大きいエネルギーへと変化し、ブラックホールが回る速度はゆっくりになります。
ヤーコフ・ゼルドビッチの研究と回転ドップラー効果の難関
ペンローズ過程は、あくまで思考実験のようなものに過ぎませんでした。
しかし、ソ連のヤーコフ・ゼルトビッチという物理学者の研究によって、正当性が認められるようになりました。
ゼルトビッチによると、光波を捻じ曲げて丁度良い速さで回る金属シリンダーに接触すればよいのだそうです。
ペンローズ過程が本当に正確であるならば、回転ドップラー効果といって光波がシリンダーのスピンからエネルギーを取り出しながらリフレクションされるといいます。
しかし、研究を達成するには問題点がありました。
研究を行うには金属シリンダーを毎秒10億回以上もの速さで回さなければなりませんでしたが、それを行うことは物理的にも不可能です。
音を用いて回転ドップラー効果の正当性を示す
そこでイギリスのグラスゴー大学の研究者は、光の代替として音を用いて研究を行いました。
光とは異なり、音は周波数が高くないものであるため、研究を行うことも容易です。
この研究は、スピーカーを使って揺れのある音波を響かせ、発泡剤によって作成されたマイク付きの回る消音ディスクに衝突させるというものです。
仮に、ペンローズ過程とゼルトビッチの研究が本当に正確なものであるならば、回転ドップラー効果により、振り幅と周波数が大幅な移り変わりを見せるはずです。
一般的なドップラー効果と回転ドップラー効果
そもそも、ドップラー効果とは一体何でしょうか。
主な例を見てみましょう。
例えばパトカーがサイレンを響かせて近づいてくるとき、サイレンの音は若干高めに聞こえます。
しかし反対にパトカーが去っていくとき、サイレンの音は若干低めに聞こえるようになります。
これは、サイレンの音が耳に入るまでの時間が長いか短いかが関係しています。
時間が短ければ高めに聞こえ、長ければ低めに聞こえるという仕組みです。
回転ドップラー効果は、一般的なドップラー効果と非常に類似した点がありますが、異なる部分もあります。
それは、回転ドップラー効果は回っている面にのみ発揮するということです。
注目したいのは、回るスピードが速くなると、周波数が正から負へと切り替わることです。
研究でディスクの回るスピードをあげると、音は人間の耳で認識できないほど低くなりましたが、周波数がゼロになると音は高くなることが分かりました。また、音の大きさも3倍にまで膨れ上がったそうです。
ブラックホールをエネルギー源とする文明と、ペンローズ過程、回転ドップラー効果についてご紹介しました。ブラックホールをエネルギー源とする文明についての詳細はまだ分かっていませんが、仮にそのような文明が本当に実在するのだとしたら、とてもロマンチックですよね。その文明がどのように発展して、どのように暮らしているのか、妄想は膨らむばかりです。
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