私たちが暮らすこの世界は今、終焉を迎えようとしていると言われています。
地域紛争を発端とする第三次世界大戦が勃発するといった人為的なものから、地球史46億年の内 5回発生した大規模な絶滅イベントと同じような大量絶滅が6600万年ぶりに起こる、地球に小惑星が衝突する、気候変動や地殻変動が各地で頻発するといった自然発生的なもの、未知の疫病が大流行する、地球外生命体が地球に侵略するといった人知を超越したものまで、様々な憶測が飛び交っています。
今回は、終焉を迎えていると言われる世界の状況に関する、各分野の専門家たちの意見をご紹介します。
人口の爆発的増加と自然環境の破壊
気象学者であるリチャード・ジュラフスキ氏は、人口の爆発的増加と、それに伴う自然環境の破壊に関する、持続可能性問題に取り組む必要があると言います。
特に人口増加は発展途上国で顕著に見られる傾向で、人口減少傾向にある先進国との経済格差の拡大、極端化にも影響を及ぼしているようです。
実際、先進国においては、世界の富裕層の上位10パーセントを独占していて、西洋資本主義社会で増加し続ける消費の割合は、世界に占める先進国の人口の割合を超越しているのです。
そして、これは「新自由主義」政策と経済格差の拡大がもたらす超資本主義によって、一層 進展しています。経済の健全性を保つ上で、資本主義と超資本主義と消費は必要不可欠なものなので、他の地域に与える影響は無視されてきました。その影響はいたる所で見ることができます。
プラスチックによる海洋汚染の深刻化や二酸化炭素などの温室効果ガスの増加と、それに伴う世界中での氷河の融解、北極や南極の氷の減少がそうです。
現状では、私たち自身が人類の絶滅を促進していて、今の文明は20年後に終焉を迎えてしまいます。では、人類が絶滅する前に一体何が起こるのでしょうか?
まず、富裕層の人々が貧困層の人々と生活区域を区別する「特区」を作り出すでしょう。しかし、そうした生活は、電力供給システムの破綻によってすぐに崩壊します。
生活や社会が崩壊すると、やがて世界各国が枯渇寸前の資源を巡って争いを始めるようになります。
文明が破綻した後、原初に立ち返って狩猟採集生活を始めたとしても、自然環境の破壊が進んだせいで野生動物は激減、増えすぎた人間の需要を満たすことは不可能です。
つまり、大型台風や巨大噴火のような大災害によって全滅するのではなく、真綿で首を締めるように、じわじわと死に近付いていくようなものなのです。
人類の歴史上、多くの大帝国の興亡を見てきましたが、最も有名なローマ帝国と同じような末路を辿るのかもしれません。
現在の世界情勢から分かること
カナダ王立軍事大学 防衛研究科の教授クリス・マドセン博士によれば、現時点で世界は比較的平和な状況にあるため、核戦争が勃発するという脅威はあまりないそうです。
各国の軍隊は、現在の軍備予算や人員の増員確保の正当化に奔走しているのが実情のようです。
現在、各地で見られる紛争も実はかなり局地的なもので、それらの多くが主体は国家ではないので、喫緊の案件はないと考えられます。
アメリカにとって、かつては交戦の危険性があったロシアも、今や諜報や謀略を主体とするものにシフトしているようです。
万が一、核兵器が使用されたとしても、単発かつ局地的なものと考えられ、使用した国は即刻、世界中から非難されることは確かです。
従って、まだしばらくの間は、比較的平和な状態が続くと予想されます。一方で、現在の世界は自然環境の破壊の進行と世界的な疫病の流行という二つの大きな危機に直面しているそうです。
これら2つの危機は、人口の爆発的増加と資源の消費量の増加に関連しています。私たちは、急速に、ある部分では緩慢(かんまん)に、自分たちが暮らす地球の生態系に毒を垂れ流し、破壊しています。
地球から見れば、私たち人間の存在などは取るに足らないものなのかもしれませんが、私たちは自分が住む地球を自分たちの都合で住めなくしているのです。
自然環境の汚染と破壊が進んだ今、私たちにできることは、きちんと環境問題に向き合う覚悟を持つか、地球以外の惑星に新天地を求めるしかないのかもしれません。
ただ、終焉を迎えると言っても所詮、私たち人間の都合の話であって、実際に人類が地球上からいなくなって2万年も経過すれば、地球は汚染・破壊される前の状態に戻るのかもしれません。
恐竜が滅亡した時と同じく、地球は回り続けるのです。
地球外のものが世界の終焉の原因となる可能性
NASA公共問題担当のJ・D・ハリントン氏は、この問題への回答は不可能だと言います。
ただ、NASAには「惑星保護官」という職務があり、その任務は、地球以外の惑星からの未確認微生物などの生命体が地球に広がることを防ぐことと、地球から他の惑星に地球の生命体を持ち出して汚染してしまうことを防ぐことだそうです。
NASAをはじめとする世界の宇宙関連機関は、地球外の天体からサンプルを回収する計画における想定外の汚染の防止に取り組んでいるのです。
核兵器、大量破壊兵器、大国間の軍事情勢に関して
カナダ王立軍事大学の防衛研究科教授エリック・ウェレット博士によれば、50年前や100年前と比較すると、大国間のパワーバランスは若干変化しつつも、それぞれの国が核兵器を所有しているため、相互のパワーバランスの均衡は維持され、攻撃を開始する事態が回避されているので、世界的な大きな戦争が勃発する可能性は低いと言います。
北朝鮮のような存在を危惧する人もいるかもしれませんが、北朝鮮の実情は私たちが思うよりもかなり規律的なのだそうです。
確かに最近の動向を見ると、危険性が高まっているようにも感じますが、ウェレット博士はそれほど心配するような事態ではないと言います。
また、大量破壊兵器が使用される可能性については、様々な技術的問題があるため、実際に使用することは難しいそうです。
そうした理由から、現時点で兵器などの軍事的な面で世界が終焉を迎えている状況にあるとは言えないそうです。
一方100年後、150年後といった未来を考えると 簡単に言及することは難しいとしつつも、総合的な国力が衰退した西洋諸国で紛争が増加している可能性があると言います。
ただ、絶対と断言できることではないとしつつも、壊滅的な世界大戦が勃発することはないそうです。
人類が「ゾンビ化」する可能性
作家ジェームズ・トンプソン氏によれば、自然の摂理に関してほとんど無知に等しい私たち人類が、自然に大きな影響を及ぼすことを想像せずに生物兵器や化学兵器を使用することで、想定外の副産物を生み出す危険性があると言います。
そうした中で、特に生物研究分野での遺伝子操作による新種の強力なウイルスを開発する過程で、人間を「ゾンビ化」させるものが 作り出される危険性が極めて高いと言うのです。
映画やドラマのように 死者が蘇り、生きている人間の脳を食べるといったイメージ通りの「ゾンビ」ではなく、人間の脳が侵され、破壊的な衝動の抑制が効かなくなるといった事態を招く可能性は容易に想像できます。
ただ、その可能性があることを予見できれば、治療方法を開発することも可能です。人類は、これまでも様々な疫病の大流行を経験し、甚大な被害を被ってきましたが、治療方法の開発によって克服してきたことも事実です。
「世界の終焉」に関して繰り返される流言飛語は、諦念と悲哀に満ちていると同時に、浪漫と希望も感じさせています。人類が絶滅する、あるいは地球の終末の日を「午前0時」になぞらえ、その終末までの残り時間を象徴的に示す「世界終末時計」の残り時間は、わずかなものとなっていますが、私たちが生きる今の時代は、本当に終焉に向っているのでしょうか?
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