私たちは地球という星に住み、多くの生物に囲まれて生きています。
地球は奇跡の星であり、太陽からの位置・空気の構成要素・大地などのすべてが絶妙なバランスである、本当に低い確率でできている惑星だといわれています。
加えて、地球のような奇跡の星でも、高度な思考をする人間が誕生したのはたった20万年前のことなのです。あらゆる奇跡が重なって、高度な思考が可能な生命体が誕生しているわけですが、それを踏まえると、いくつかの疑問が生じます。
「同じような星が誕生した場合、同じようなルートを辿って、同じような人間に近い生命体が誕生するのだろうか?」
「人間がもっと早くに誕生するルートはなかったのだろうか?」
「そもそも、地球と同じような星でも、生命体は誕生するのだろうか?」
このような疑問を解決すべく、アメリカ・コロンビア大学の助教授が立ち上がりました。
彼の名は、デービッド・キッピング。今回は、彼が謎を解明すべく検証した内容についてご紹介します。
生命体誕生は奇跡?
そもそも生命体の誕生は、どれほどまでに難しいことなのでしょうか?
これについては、イギリスの天文学者が「廃材置き場の上を竜巻が通り過ぎた時に、飛行機が偶然できあがっているような確率」と述べており、大変低い確率での事象だと考えられています。
一部では、思っているよりも簡単に生命は誕生するという考え方を持つ人もいます。地球が誕生してから最初の生命体が誕生するまでに、それほど時間がかかっていないことから、そう考える人もいるのでしょう。
では、どのくらいの確率で起こるのかを検証してみましょう。
今回ご紹介する研究では、単なる生命誕生ではなく知的生命をもつ確率について言及しており、4つのパターンに分け検証されています。
4つのパターンの検証
4つのパターンを想定して、どの状態が近いのかを検証しました。
生命の誕生は簡単か?
進化に時間はかかるのか、つまりその星が滅亡する前に知的生物に進化することはできるのか?
この2点に注目して場合分けをするのです。
2.生命は稀少な現象だが、進化は急速であるため一般に知的生物に進化する
3.生命は一般的で、しかも大抵は知的生命に進化する
4.生命は稀少で、知的生命はさらに稀少である
これらの場合分けを、ベイズ推定という統計手法を用いて、検証することにしました。
ベイズ推定とは、観測された事実をもとに推定する方法です。
例えば、Google社が提供する検索エンジンの自動翻訳システムも、このベイズ推定を利用しています。
検証結果
検証した結果、生命が誕生する確率は、誕生がかなり希少な確率よりも9倍高く、生命が誕生する確率は比較的高いことがわかりました。
そして、知的生命の誕生も確率自体は、誕生がかなり希少だという確率よりは少し高く、知的生命体が誕生する確率は やや高いことがわかりました。
つまり、進化のスピードはそこまで遅くなく、その星が滅亡するまでに知的生命体に進化する可能性があるということです。
よって、生命誕生も知的生命への進化も、そこまでの低確率ではないことという結果が 得られました。
地球のような星があれば、この地球と同じように生命も誕生し、知的生命もいずれは誕生する可能性は十分にあるのです。
今回の検証では、あくまで地球のような環境を前提としているため、地球以外の星で生命が誕生できるかどうかを断定することはできません。
しかし、本研究の著者は「地球外生命体の捜索をあきらめる理由はない」と前向きに語っています。
地球は実際に誕生しているのですから、他にも生命体が繁栄する星があったって不思議ではないのです。
参考 : pnas.org など
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