宇宙に多く存在する小惑星。
しかしそれら小惑星が私たちの住む地球に接近、衝突し、危害を及ぼす可能性は否定できません。
もし、小惑星が衝突して地球に危機が訪れたとき、私たち人類はどのような行動をとればよいのでしょうか?
小惑星の衝突について、映画や小説といった作品でも描写され、作品のテーマとして用いられることもあります。
非常にリアリティさに欠けているようにも思われる現象ですが、作品で描かれているような出来事が現実では起こらないとは限りません。
そこでMITの研究者チームは、小惑星から地球を救うための対処法について研究し、その研究内容を論文としてまとめ、公表しました。
今回は、これらの研究を ご紹介いたします。
とある小惑星の地球への衝突の可能性
アポフィスとベンヌ。これらは地球への衝突の可能性が少なからずあるといわれています。
地球への衝突を防ぐためにはこれらの小惑星の軌道を変更させる必要があります。
そこで、研究チームはどのようにして軌道を変更させればよいかということについて、成功率の高さを踏まえながら シミュレーションしつつ研究を行いました。
仮に、小惑星が地球にぶつかったときのことを考えてみましょう。
その際小惑星は、重力キーホールといわれる狭小な空間領域を通過することになります。
小惑星がその重力キーホールを通過してしまうと、私たちの住む地球に危険を及ぼしかねません。
今にも小惑星が迫ってくるという状態にさらされながら、人々はこれ以上小惑星による危険がないように対応しなければならないのです。
しかし、そのようなパニックのなか冷静かつ臨機応変に対応するのは困難ですし、判断力を鈍らせてしまう可能性があります。
そこで研究チームは、小惑星の重力キーホールの通過を阻止して小惑星の衝突を防ぐ方法について研究しました。
核爆弾による軌道変更
2007年にNASAに提出されたレポートによると、小惑星の軌道を変更させるためには、核爆弾の爆発による小惑星の軌道チェンジが有効であるとされています。
核爆弾には、小惑星を吹き飛ばす力があるように思えますが、この方法には問題点があります。
それは核爆発によって発生する放射性降下物の問題です。
核爆発後、地球に降りそそぐ放射性降下物によって私たち人間だけでなく、地球に住むすべての生物に影響を及ぼしかねません。
生態系が変わってしまう可能性も充分にあります。
また、核爆発後、小惑星がどのような動きを示すのかという点についても正確には分かっていないため、失敗どころか最悪の自体になる可能性も少なくありません。
インパクターによる軌道変更
核爆弾による軌道変更に問題点があるならば、次に考え出されたのがインパクターによる小惑星の軌道変更です。
インパクターとは 衝突装置のことで、例えばロケットや宇宙船などといった発射体を指します。
そうした発射体を小惑星にぶつけることによって、小惑星の軌道をチェンジさせようという試みです。
要はビリヤードのようなものだと考えてよいでしょう。
インパクターによる作戦の問題点
しかし、この方法を用いることによって懸念されているのが成功率の低さです。
インパクターによる軌道変更を達成させるためには小惑星の質量、運動量、軌道、表面組成などについて正確な情報を取得しなければなりません。
小惑星の特性について少しでも情報が不足している場合、成功は困難で、かといって、このような情報を正確に把握することは難しいとされています。
インパクターと激突回避
前述では、インパクターによる小惑星の軌道変更について説明しました。
今回の研究では、インパクターによる小惑星の軌道変更を行う際に生じる問題点をカバーし、地球への小惑星の激突を防ぐためには どのようにすればよいかということについて 検証されていったのです。
小惑星の重力キーホールの位置は 未だ不明なものが多く存在しますが、そのうち、アポフィスとベンヌは、重力キーホールの位置が判明しています。
そこで研究チームは、これら2つの小惑星と重力キーホールの距離を考慮して、いくつものパターンについて考えました。
仮に、アポフィスの重力キーホールの通過が5年前に分かったとします。
その場合、人類は調査船などによって小惑星について詳しいデータを入手したあと、軌道を変更させる調整を行ってインパクターを発射すべきだとしました。
しかし、アポフィスの重力キーホールの通過が1年前に分かった場合には、インパクターの発射は困難であるということについても判明しました。
ベンヌについては、物質組成など詳しい情報が多いため、直ちにインパクターを発射することが有効だとされています。
小惑星の衝突と、その回避方法の研究について見てきました。研究チームは今後、シミュレーションにより小惑星の衝突を完全に防ぐための予測を目指しています。私たちにとっては 非現実的的に思える小惑星の衝突ですが、はるか遠くない未来に その瞬間はやってくる可能性は充分あるでしょう。そのときに備えて 知識をつけておくことが、私たちにとって 大切なことなのかもしれません。
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