私たちの住む地球は現在にいたるまで、数多くの破壊的な事件に遭遇しています。地球の長い歴史の全貌が、研究者たちによって明かされ始めたのは実に最近のことです。
人類が誕生する前に起こった出来事は今なお研究の途中で、ときにはハリウッド映画の題材にもなるほど人々の興味を惹きつけています。
ヤンガードリアス
ヤンガードリアスと呼ばれるこの時代では、主に北アメリカに生息していた大型の動物たちが一斉に絶滅しました。
これは13000年ほど前の出来事で、ちょうど最後の氷河期が終わり、地球の温暖化が始まったばかりの時期に当たります。
しかし、その温暖化が突如 何かしらの要因でストップし、一気に気温が急落しました。急落した気温は、その後1000年間回復することはなく、数多くの種の生物を絶滅に追いやりました。
最新の研究データによると、氷河期が終わると同時に氷が溶け、湖の水が海に流れ出したことでこのような気温急落が起こったのだと考えられています。
現在ではもう残っていませんが、アガシー湖はこの気温急落に関わった湖の代表例です。アガシー湖の冷たい水は、長い間氷によってせき止められていました。
しかし、氷河期が終わると同時にその氷が溶け、湖の水は海に流れ始めました。その結果、海の暖流が冷やされて周辺の気温が急落したのです。これと同じようなことが世界各地で起こったと考えられます。
また、隕石が地球に墜落したことが気温急落の原因であると考える研究者もいます。グリーンランドで採取された氷床のサンプルから、イリジウムやプラチナが見つかったことがこの仮説の根拠になっています。
この時代の地層に炭素粒子やダイヤモンドが含まれていることも、この仮説を裏付ける証拠になるでしょう。
ガンマ線の閃光
地球から眺める星空は美しいものですが、宇宙そのものは非常に危険な空間です。その要因のひとつとして、大規模な恒星が滅亡するときにときに、ガンマ線が閃光のように放出されるGRBという現象があります。
これは、1秒にも満たない時間のうちに、100億年分の太陽光線に相当するエネルギーが発生するという、想像もつかないほど恐ろしい現象です。
大気のモデリング実験から、オルドビス紀末の大絶滅の原因はGRBだったのではないかという仮説が浮上してきました。
オルドビスといえば、恐竜が誕生するよりも更に2億年前の時代で、このころの地球には動物はもちろん、主要な植物もまだ存在していませんでした。
この時代、地球の6000光年先で10秒間のGRBが発生したことで地球のオゾン層が半分以上破壊されました。
オゾン層を失った地球は有害光線を直接受けることになり、海洋に生息していた生物の6割が絶滅したといいます。
プランクトンの死滅により食物連鎖も根本から破壊されました。また、有害光線によって大気の構成が変化したことで寒冷化も始まり、地球の生態系は以前とは完全に異なるものになってしまいました。
このような状況の中で、深い海底に生息していた生物たちだけは あまり影響を受けずに生き残っていたと考えられます。
地中海の誕生
氷河期だった530万年前の時代のジブラルタルには、アフリカとヨーロッパを陸上生物が行き来するような細長い陸地が存在していました。
このころは海面が低かったため、大西洋の海水が細長い陸地によってせき止められ、地中海盆地が砂漠のように干上がって、ところどころに塩湖が形成されていました。
しかし氷河期の終末を迎え、海面が上昇してくると、大西洋の海水はゆっくりとその陸地を超えはじめ、徐々に水滴を垂らすように盆地に侵入してきました。
この水滴の流れは次第に勢いを増し、最終的に地球史上最も大規模な滝が出来上がりました。その滝の勢いは、アマゾン川の1000倍もあったといいます。
滝は数ヶ月のうちに盆地を水の底に沈めました。当時は1日で10mもの海面上昇が起こっていたそうです。このできごとによって盆地に生息していた生物は完全に消滅し、盆地は現在の地中海になりました。
大絶滅
古生代末の大絶滅は地球の歴史の中で最もひどい大量絶滅として知られています。古生代最後の時代、ペルム紀の終末である2.5億年前には、地球上の生物のほとんどが滅亡してしまいました。
木々は一掃され、海に住む生物のうち生き残ることができたのはわずか4%でした。この原因は、超大陸パンゲアの時代にシベリア地域で起こった玄武岩質の溶岩の噴出だと考えられています。
この噴出は一般的な火山の噴火とは異なり、地球そのものに穴が空いて溶岩が広範囲に噴出する現象でした。噴出した玄武岩質の溶岩は300立方kmにも及び、その状態のまま100万年が経過しました。
この噴出によりCO2やSO2が大気中に充満することとなり、大規模な気候変動と大気汚染が引き起こされ、現在のアメリカの国土と同等の面積が深さ1kmの溶岩の下に沈んでしまいました。
動物の生命活動に必要な酸素は欠乏し、海では海水の酸化と海流の阻害が同時に起こりました。そのあと、短期的な冬があった後に長期的な温暖化が始まりました。
その温暖化から地球が開放されるまでには数百万年かかったといわれています。
シバインパクト
最新の研究データによると、恐竜の絶滅の原因となった隕石は1つだけではなく、2つ存在したということがわかりました。
一般的に恐竜を絶滅させた隕石の痕跡として有名なのは、メキシコにあるチチュルブクレーターです。
この地に墜落した直径10kmの隕石が大気汚染を引き起こし、食物連鎖が破壊された結果、恐竜が絶滅したというストーリーがこれまでの定説でした。
しかし 今回の研究で、メキシコに隕石が墜落した約30万年後、まだメキシコの隕石のダメージが癒えない地球にもうひとつの隕石が墜落していたという可能性が出てきました。
その隕石はインドの海底に直径480kmもの巨大なクレーターを作ったそうです。もしこれが事実だとすれば、インドで地球史上最大の隕石被害が起こっていたことになります。
このクレーターは、インドで信仰されているヒンドゥー教の破壊神の名前を借りて、シバクレーターと呼ばれています。
研究では、この隕石が墜落したエネルギーで地殻が熱されて蒸発してしまい、洪水玄武岩が起こったといわれています。洪水玄武岩は有害ガスの放出、火山活動の活性化、プレートの破壊などをもたらしました。
有害ガスによって大気は汚染され、火山活動が活発になったことで各地の火山が相次いで噴火し始めました。また、プレートが粉々に破壊されたために大地震や大津波も発生しました。
1度目のメキシコへの隕石墜落の被害から逃れることのできた恐竜たちも、これだけの自然災害が一度に重なったことによって、とどめを刺されたのではないかと考えられます。
私たち人類が生まれる前の地球は、地球そのものの存続が危うくなるほどの危機的な状況に何度も見舞われていたということがわかりました。何百万年も続くような温暖化もあり、私たちが現在生きているのが奇跡に思えてきます。過酷なピンチを切り抜けて ここまで続いてきた地球を、私たち人類が傷つけることのないようにしたいですね。
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