宇宙には様々な不思議や未知で溢れかえっています。世の中の学者や研究者は、公式や理論を用いて宇宙について考察していますが、それでも不可解なことだらけです。
しかし、それでもだんだんと解明している現象も存在します。かの有名なアインシュタインが、一般相対性理論を提唱したことは多くの人々がご存知のことでしょう。
今回は、彼が提唱した一般相対性理論と、ブラックホールを周回する恒星の関係性について紹介していきたいと思います。
ブラックホールを周回する恒星
私たちが属する地球から2万6000光年離れた天の川銀河の中心。そこには太陽の400万倍の質量を持つ巨大なブラックホールがあります。
そのブラックホールの周辺には多くの恒星が公転しており、太陽系が複雑になったような星系が築かれています。
星の軌道は楕円を描いており、この楕円を星が周ると星がブラックホールに接近したり離れたりする現象が発生します。
恒星S2の軌道
ヨーロッパ南天天文台のVLT望遠鏡が観測した恒星S2というブラックホールを周回する恒星の1つは、最大で200億km未満(太陽ー地球間の120倍)の距離までブラックホールに接近します。
このときS2は、光速の3%近くまで加速し回転する軸が少しだけ元の軌道よりズレていきます。
シュバルツシルト歳差運動
こうした軌道のズレはシュバルツシルト歳差運動と呼ばれ、アインシュタインの一般相対性理論によって予想されていたといいます。歳差運動は、回転軸がズレながら回転していく運動のことをいいます。
例えば、コマ回しのコマ。最初は高速で回転を繰り返していますが、コマはやがて失速していきます。失速してきたコマは、コマが傾いた状態のままぐらぐらと回転します。これが歳差運動です。
一般相対性理論とシュバルツシルト歳差運動の一致
S2の公転周期は16年ほどで、これを観測するにはおよそ30年近くもの年月をかけて恒星を追跡し続ける必要がありますが、シュバルツシルト歳差運動を観測した研究チームは、27年もの間恒星S2を観測し続けました。
そして、観測したシュバルツシルト歳差運動は、一般相対性理論が予想していた軌道と見事に一致していたそうです。
ニュートン力学と一般相対性理論
実は一般相対性理論よりずっと前に、ニュートン力学においても公転する天体の歳差運動について予想されていました。近日点とは、太陽系の惑星が太陽に最も近づく点、ポイントのことです。
ニュートン力学では、水星の近日点が徐々にズレてゆき、公転軌道が歳差運動していることが予想されていました。この現象を、水星近日点移動といいます。
水星近日点移動の現象は既に観測されているものではありましたが、観測結果とニュートン力学により計算された軌道には誤差が認められていました。
ニュートン力学では重力が強く、天体の運動速度が光速に近づいた状態ではうまく機能しないためです。そこで、これをより高い精度で観測結果と一致させたのがアインシュタインの一般相対性理論というわけです。
そして今回の観測から、ブラックホール周辺という極端な環境においても、一般相対性理論の予想が恒星の軌道と見事に一致したことが分かりました。こうして一般相対性理論は証明されていったのです。
なお、この研究はマックス・プランク地球外物理学研究所の研究者、Frank Eisenhauer氏が率いる国際チームによって発表され、観測に基づいた天文学の査読付き学術雑誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジックス』に論文が掲載されています。
恒星S2の軌道と一般相対性理論の証明について紹介しました。これから宇宙の不思議なことについて明かされていくと良いですね。そして何より長い年月を費やして観測・研究を行ってきた研究チームの人々には畏敬の念しかありません。
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