人生は選択の連続です。
あなたがある選択をした際、“パラレルワールド”には別の選択をしたあなたがいる可能性があります。
果たしてパラレルワールドはあるのでしょうか?
気鋭の理論物理学者は、パラレルワールドが確実に存在すると主張するのです。
今回はこれらパラレルワールドについて、ご紹介いたします。
「別の自分」がいるパラレルワールド
パラレルワールドは、多くのSF小説やアニメ作品などに取り入れられている世界観です。
パラレルワールドや並行世界といったものは、空想の世界だけに存在するものだと考える人もいますが、ある専門家たちはパラレルワールドの存在を肯定しています。
そして、それはほぼ無限に存在し、その全ての世界に自分が存在しているというのです。
誰にでも、その後の人生を左右する“運命の瞬間”があります。
もし、その時に今とは異なる道を選んでいたら、あなたの人生はどうなっていたでしょう?
別の選択をしたあなたが、パラレルワールドで今のあなたと異なる暮らしを送っていても、不思議ではないのです。
物理学者らパラレルワールドの存在認める
パラレルワールドの“元ネタ”は、1957年に発表されたアメリカの物理学者ヒュー・エヴェレット氏の論文にあります。
彼は、この世界は常に“枝分かれ”しており、今この瞬間も、無数のパラレルワールドが誕生しているという「多世界解釈」を持ち出しました。
別の意思決定を下した“自分”が別の世界で生きていると考えると、愉快に感じる人もいるでしょう。
しかし、既に枝分かれしてしまった状態の世界から、パラレルワールドの存在をはっきり証明する事は、理論上できません。
そんな中、注目を集める気鋭の理論物理学者、ショーン・キャロル氏は、パラレルワールドは確かに存在すると言い切りました。
2019年出版された著書の中で、キャロル氏は「一般的な物理学と量子力学を“統合”する必要はない」と述べました。
その理由について彼は「量子力学はこの世の“真実”であるから」と説明しています。
極めて奥が深い量子論の世界ですが、キャロル氏いわく、量子力学の観点に立てばパラレルワールドが存在しなければならないのです。
これは空想の世界が存在するという意味ではありません。
キャロル氏は、量子論に属するメカニズムで一定の条件が揃った場合、パラレルワールドが誕生する事を示唆しています。
別の選択をした自分は現実に存在する
キャロル氏はパラレルワールドの存在について、「自分が別の決断を下した世界は複数存在しうるのであり、我々は物理学の法則に従っているだけである」と語ります。
エヴェレット氏の提唱する、パラレルワールドは刻々と枝分かれし、同時並行的に派生しているという多世界解釈を、キャロル氏は支持しています。
キャロル氏によれば「“ワールド”の数が有限か無限かはわからないが、途方もない数である事は確かだ」との事です。
パラレルワールドが存在し得る以上、“運命の瞬間”に別の道を選んだあなたが、別の世界で今とは異なる人生を歩んでいる可能性もあります。
パラレルワールドでのあなたについて、色々な想像ができるはずです。
そして、そこのあなたは想像の世界ではなく、ある意味では現実に存在しているといえます。
パラレルワールドは互いに干渉しない
キャロル氏の話には、物理学を逸脱した超物理学的な視点や、スケールの大きい宇宙観も関わっています。
彼はNBCのインタビューで「電子であろうと原子であろうと、物体を見る前であれば、それは特定の場所にはない」と答えた事があります。
物体は、ある特定の場所で観察する可能性が高いものの、実際には必ずそこにあるわけではないというのです。
量子論では、例えば箱の中の猫が生きているのか死んでいるのかは、意思を持った主体が“観測”する事で“決定”されます。
一方多世界解釈の世界では、猫が生きている世界も猫が死んだ世界も、同時に存在している事になるのです。
帰宅して机の上に財布を置けば、次に外出する瞬間まで財布は机の上に必ずあるはずですが、そこに財布がない世界もまた存在し得るのです。
多世界解釈が正解である可能性を信じるのは、キャロル氏以外にも故スティーブン・ホーキング博士などの著名人がいます。
ホーキング博士は晩年の研究で、ビッグバンによって無数の宇宙、言葉を変えると「多元的宇宙」が我々に与えられた事を示唆しています。
それでは、この無数に存在するというパラレルワールドを覗き見たり、身をもって訪れたりする事は可能でしょうか?
残念ながらキャロル氏は、その可能性は極めて低いと述べます。
「パラレルワールド同士は互いに作用せず、どのような形においても影響し合わない」と彼は主張します。
キャロル氏の推測が正しければ、SF小説やアニメ番組のようなパラレルワールド体験は見込めません。
現代の物理学を批判するキャロル氏
キャロル氏は、現代の物理学は誤った方向へ力が注がれていると指摘します。
具体的にはビッグバン理論をはじめとする宇宙の成り立ちと、自然法則の解明という2つを重視しており、これらを結び付けようとする事にこだわり過ぎているというのです。
そして、今は新たな視点から宇宙論の全体像の問題に取り組むべきだと主張します。
「物理学は、自然とビッグバンの基本的な部分を理解しようとしているが、今は1歩下がりそれらの基礎を理解し、量子論の世界の理解に取り組むべき時だ」と彼は述べたのです。
物理学では基本的に、不可解な現象を見つけた時に仮説を立てて検証し、物理法則とリンクさせようとするのですが、キャロル氏はその姿勢は正しくないと主張します。
現実がどのように“見える”かが問題ではなく、どのように“見る”かが量子論の観点では大切だというのです。
つまりは宇宙の成り立ちを研究するのではなく、量子力学の分野の研究を具体的に深めていく必要があるという事です。
そして技術が進むにつれ、不可解な量子論の世界も徐々に観測可能になってきた点が、パラレルワールドの研究の手助けとなっているとキャロル氏は述べます。
それでは、我々がパラレルワールドについての知見を深めた先には、何が待っているのでしょう?
キャロル氏は「宇宙がなぜ、また何のために存在するのか」を誰かが発見した場合、今ある宇宙は一瞬で消え、更に不可解なものに置き換わるという理論を紹介しています。
そして、それが既に起こっている事を示唆する別の理論もあるというのです。
2011年のプレゼンテーションでキャロル氏は、この宇宙の成り立ちについて「ビッグバンがなぜ起きたかは説明不可能だが、これが何度も起きていると考えられる」と主張しました。
そして宇宙は極めて複雑であり、我々が生きている世界は、偶然に近い確率で生まれた領域だと述べたのです。
「各“ワールド”は相互作用しない」というキャロル氏の見解から判断すれば、我々がパラレルワールドに行く事はできないでしょう。しかし、パラレルワールドは決して想像の産物ではない事がわかりました。そこに別の自分が存在しているという事は、誰にとっても非常に心躍る事実といえるでしょう。
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