アメリカ合衆国のアリゾナ州北部に広がる雄大な景観で有名なグランド・キャニオンは、長年にわたるコロラド川の浸食によって削り出された、全長446キロメートル、最大幅29キロメートルの峡谷です。
そうした素晴らしい自然が愛されているグランド・キャニオンには、はるか昔に滅んだ文明の遺跡が峡谷の地下に残っている、という噂があるのです。
今回は、もし噂が本当であれば、従来の歴史観が覆されてしまう可能性がある、グランド・キャニオンの謎を ご紹介します。
古代文明の証拠
1909年4月5日付のアリゾナガジェット紙の記事に、スミソニアン協会のサポートを受けていると言われる2名の考古学者、ジョーダン氏とキンケイド氏が、グランド・キャニオンの東側の地域の洞窟から、すでに滅んだ古代文明の証拠を見つけた、とあります。
崖下で洞窟を発見
彼らは、洞窟の入り口は自然環境が過酷なエリアの、急峻な崖の450メートル下にあったと主張しています。
キンケイド氏は、小型船に乗ってコロラド川を下っていた時、エル・トバー・クリスタル・キャニオンから約70キロメートル進んだ東の壁の上に、川からは隠れて見えない洞窟を見つけたのです。
洞窟の入り口から、洞窟に人が暮らしていた頃は川の水面だったと推測される所まで、階段が続いていたと言います。
複雑に続くトンネル
洞窟の中は、人が手で掘ったような複雑なトンネルが続いていました。
主通路の幅は約3.6メートルで、奥に進んだ一番狭い所で2.7メートルだったと言います。
入り口から17メートルの所に最初の分岐点が現れ、地中に1.6キロメートル潜った場所に広間があり、その広間から放射状に広がる複数のトンネルの先には、入り口に楕円形のドアがあり、丸い通風孔のある部屋が数多くありました。
壁の厚さは大体1.8メートルほどあり、部屋の天井の多くは中央に収束する造りだったようです。
東洋の文明に由来する遺物
洞窟内の寺院で見つかった、武器や銅製の器具、像、飾り壺、瓶などの遺物は、東洋の文明が起源と考えられるものらしいのです。
入り口から30メートル以上先にある十字型のホールでは、顔がブッダに似ていて、手に蓮の葉や百合を持ち、脚を組んだ神像や絵も見つけられました。
また、大理石のような石でできたサボテンが、神像の台座の両側に置かれていました。
さらに別の部屋からは、エナメルやガラスなどで加工され、美しい意匠が施された壺や銅杯も見つかりました。
他には、穀物庫もあり、そこからは数種類の種子も見つけられました。
穀物庫に入ることのできる上部の屋根の縁には、梯子がかけられるようになっていたことも分かっています。
ミイラを安置する棚
洞窟で見つけられた、ひときわ大きな空間には、ミイラを安置するために、石の壁を削って35度くらい後ろに傾斜させ、段になった棚が作られていました。
頭の部分は小さな台に乗せられ、周りには銅杯や剣などが設置され、一部を除いて樹皮でできた布で巻かれたすべてのミイラが男性だったので、この空間は兵舎として使われていた可能性も考えられます。
設備が整った、広大な「地下都市」
この洞窟は、兵舎の他にも食堂などが見つかるほど十分な広さがあったため、キンケイド氏は、この「地下都市」では5万人が生活できるだろうと推測しています。
古代エジプトに由来する文明
この「地下都市」は、古代エジプトに由来する文明を発達させたもので、ネイティブ・アメリカンよりも前から存在したと考えられます。
象形文字が刻まれた石板を解読できれば、北アメリカ先史時代の人々の正体やその時期、持っていた技術などの謎が解明されるはずです。
その暁には、エジプトとアメリカ合衆国、ナイル川とコロラド川が、小説家ですら想像できない歴史の連鎖で繋がることになるのです。
フェイクニュースの可能性
グランド・キャニオンの地下に存在する、古代エジプトに由来する都市の話は、極めてセンセーショナルなものですが、遺物や遺構の写真など、この話を裏付けるものはほとんど無く、キンケイド氏が実在の人物なのかどうかも証明できていません。
キンケイド氏は、スミソニアン協会に回収した遺物を搬入した、と主張していますが、スミソニアン協会は、ワールド・エクスプローラーズ・クラブで「北アメリカや南アメリカでエジプトの遺物が発見された事例は一切なく、当協会がこうした発掘に関与したことは一度もありません」と、述べています。
証拠も無く、報告内容もあまりにも突飛なものなので、作り話である可能性はかなり高いと考えられます。
一方で、証拠が全く無いにも拘らず、地下文明の存在に関する話が忘れられることはなく、これまで様々なメディアで取り上げられてきているのも事実です。
「洞窟」は、秘密結社の本拠地か、「レプティリアン」の根城
地下文明の存在を信じる人たちは、嘘をついているのはスミソニアン協会で、現在の歴史パラダイムの維持、継続のために遺跡の発見に関する証拠や記録を隠滅したと言っています。
さらに、洞窟の存在を証明できるという人物まで現れました。
例えば、ジャック・アンドリューズという人物は1972年に、その場所を突き止めたと語っていたのですが、実際には具体的な場所について謎めいたヒントを残しただけで、明言していません。
ジョン・ローズという人物も、1909年4月5日付のアリゾナガジェット紙の記事にある「洞窟」と「地下施設」の場所を知っている、と主張していましたが、彼は相当口が堅く口を開いても、その場所は秘密結社の本拠地になっているため武装した警備員が常駐しているということを話すだけでした。
一方、奇抜で風変わりな説を提唱するデーヴィッド・アイク氏は、キンケイド氏が見つけた「洞窟」は「レプティリアン」の根城となっている、という説を主張しています。
1999年に出版した著書「大いなる秘密」で、アイク氏は、1909年にキンケイド氏によって、グランド・キャニオン付近でエジプト・ギザの大ピラミッドに勝るとも劣らない精度で構築された「地下都市」が見つかったことに触れ、調査隊を率いたジョーダン氏の報告として、その「地下都市」の規模は5万人が生活可能なくらい大きく、東洋、恐らくエジプトに由来するミイラも見つかったと書いていました。
さらに、アイク氏の調査結果として、それらが別次元、つまり下位次元である第四次元のものだと判明していると言い、「レプティリアン」による支配と操作が画策されているそうです。
謎の洞窟の真相
キンケイド氏が見つけたと言われている「謎の洞窟」についての議論は、これからも私たち人類の想像力を刺激し続け、衰えることはないのかもしれません。
「洞窟」や「地下都市」の文明が、伝説の通りに存在するのであれば、私たちが認識する歴史がガラリと書き換えられることは確実ですが、現実的な証拠が一切無いことを考慮すれば、新たな陰謀論の出処程度にしかならないのかもしれません。
グランド・キャニオンの地下に文明の遺跡があったという噂には、本当に何らかの真実が隠されているのでしょうか?それらの文明を持った「地下都市」が本当に存在するのだと仮定すれば、それは一体どこにあるのか?そしてその「地下都市」で暮らしていた人々は一体何者なのか?疑問が尽きることはありません。
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