30年近くにわたって粛々と進められている、NASAの太陽系探査「ディスカバリー計画」の存在をご存知でしょうか?
12のミッションが計画実行され、現在も進行中のミッションもあります。
今回は「ディスカバリー計画」の新たなミッションについて、ご紹介します。
「ディスカバリー計画」とは?!
NASAは1992年、太陽系内を探査する主旨で「ディスカバリー計画」を立ち上げました。
計画を推進する前提として「より速く、より良く、より安く」のスローガンを掲げ、低コストと効率化を図ることでより多くの探査を実施することを目指しました。
計画実行は、1996年に打ち上げられた「マーズ・パスファインダー」による火星探査を皮きりに始まりました。
現在進行中のミッションとして、12番目のミッションに選出され、2018年に打ち上げられた「インサイト」による火星探査があります。
さて、2021年に遂行予定の「13番目のミッション」が選考されようとしています。
候補は4つあり、1つの惑星と2つの衛星にフォーカスされています。
金星
金星については、2つのミッションが該当しています。
今回の候補の中では、地球からの距離がもっとも近い天体です。
これは、先のスローガンの「速く、安く」にも合致しています。
VERITASは、金星の大気外から高精度の地形図作成が目的です。2005年に打ち上げられ、2014年にその役目を終えた「ビーナス・エクスプレス」の後継として期待されています。
DAVINCI+は、金星の大気中に突入し、地表近くの大気組成と、地表面の撮影が目的です。
NASAによる金星探査は1989年打ち上げの「マゼラン」以来となります。ミッションは2つまで選出される可能性があるようです。
もし遂行するミッションが2つになった場合は4分の2の確率ですから、どちらかは選出されるのではないでしょうか?
金星に興味のある方は、近年中に研究が進展することを期待ながら、選出を見守りましょう。
イオ
金星から離れ、次の探査対象は木星の衛星「イオ」です。
イオは、自転と公転の周期は一致しています。地球の衛星「月」と同様に、木星に向けている面は常に同じ面です。
イオ探査のミッション名「IVO」は「Io Volcano Observer」の略称です。
IVOはその名の通り、「噴火観測」が目的です。イオの噴火は地球上から観測が可能なほど、巨大なものです。
この巨大噴火の熱源は「潮汐加熱」によると言われています。
イオにおける潮汐加熱とは、木星や同衛星のエウロパなどからの強力な引力により、イオ自体にわずかな歪みが生じます。
歪みと同時に内部で生じる摩擦熱のことを指します。IVOにより潮汐加熱の研究が進むと、同じく潮汐加熱している天体の研究も進みます。
計画のスローガンでもある「効率化」には、非常に理にかなった計画と言えます。
トリトン
最後の探査対象は、海王星の衛星「トリトン」です。4つのミッションで、もっとも遠距離の天体の探査です。
トリトンは、自転とは逆方向に公転しています。
この不思議な現象は、もとはトリトンは独自の天体でしたが、のちに海王星に捕獲され、結果的に衛星になってしまったからと考えられています。
トリトンに もっとも接近したのは、海王星探査機「ボイジャー2号」以来となります。
トリトン独自の探査は初めてです。ボイジャー2号によって、トリトンに地下水が存在する可能性を認めました。
なので、今回のミッション候補である「TRIDENT」によって、地下水の確認と生命の存在にせまる探査を目的としています。
話を聞いているだけで、広い太陽系が少し狭まった感じがしませんか?30年の永きにわたって続けられたディスカバリー計画は、明確で効果的なスローガンを打ち出したNASAの傑作ではないでしょうか?また、スローガンに照らし合わせるなら、金星のどちらかのミッションが選出されるのではないでしょうか?これからもディスカバリー計画を軸にして、太陽系の解明を見守っていきましょう。
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