今回の主役「シリウス」は、実は2つの星で成り立っているのです。
また、大規模な爆発によって地球に大きなダメージを及ぼす危険性があるという事実もあります。
今回は、この天体が極めて強い光を見せる理由などについて詳しくお話しします。
シリウスとは
今回のテーマとなるシリウスは自ら光を放つ恒星の1つで、オリオン座の恒星である「ベテルギウス」、そして こいぬ座の「プロキオン」と合わせ「冬の大三角」と呼ばれます。
地球上で観測可能な太陽系外の星の中で最上級の明るさを誇るシリウスは2つの星で成り立つ「連星」である事も明かされています。
比較的若い段階の恒星「シリウスA」と、恒星の終末期である白色矮星「シリウスB」から成り立っているのです。
シリウスという名の由来
シリウスという天体名は、「火花を散らすもの」などの意味を持つギリシャ語にちなんでいます。
その言葉はセイリオスという言葉で、これが天体名の元なのです。
またこの星はエジプト神話にも影響を与えており、それに登場する「女神イシス」はシリウスの象徴とされます。
シリウスの明るさ
シリウスは時折昼間でも見える程の明るい星です。
地球から観測可能である太陽系外の星で、シリウスの次に明るいのは「カノープス」です。シリウスはこのカノープスの倍の明るさを誇ります。
しかし、太陽系外の天体である事から、より地球に近い太陽や月、金星、木星と比べると明るさは劣ります。
ただ、位置によっては地球に非常に近い火星、水星以上に明るく輝いて見えるケースがあります。
シリウスは太陽よりも大きい
恒星であるシリウスAの大きさと質量は、太陽をも凌駕します。
シリウスBについては地球とほぼ同じ大きさと考えて問題ありませんが、かつてはより巨大でした。
よって昔のシリウスは今以上に強い光を放っていた事でしょう。
シリウスの温度
シリウスAの表面温度は1万℃近くあり、中心温度に関しては2,000万℃を超えるとみられます。
太陽の表面温度が約5,500℃で、中心温度が約1500万℃なので、シリウスが計り知れないレベルの熱を持つ天体である事がわかります。
その温度の高さ故、シリウスは太陽のような赤色ではなく、青白い光を放つのです。
また、シリウスBはシリウスAよりも温度が高く、表面温度に関しては約25,000℃にも及ぶとみられます。
シリウスBは明るさこそシリウスAに劣りますが、温度は太陽の5倍近くあります。
シリウスと地球の距離
9光年弱というのが地球からシリウスまでの距離です。
フルスピードのスペースシャトルで4万年近くかけてたどり着くような距離ですが、天文学的に見れば地球のすぐ近くに位置するといえます。
シリウスが明るい理由
自ら光を発しているシリウスは温度も高く、周りの天体と比べても巨大です。
更に、天文学的な観点では地球から決して遠くない場所に位置します。こうした事から、シリウスの光は地上から明るく見えるのです。
なお、数えきれない程の星が存在する宇宙空間には、シリウスを超える大きさや、明るさを持つ天体も存在します。
シリウスの色
1900年近く前のヨーロッパでは、シリウスの光の色は青白い色ではなく、赤い色だと認識されていました。
シリウスA、シリウスB共にそのような色の光を発する事はありませんが、光が赤く見える事については、複数の理由が考えられます。
例としては、大気中の成分の影響で光が赤く見えた可能性などが考えられます。
シリウスはどのくらい存在し続けられるのか
シリウスという天体そのものの生涯がどのくらいかご存知ですか?
答えは約10億年とされます。
この年数は太陽の寿命と比べ圧倒的に短いのですが、これはパワーを大きく消費しているからなのです。シリウスAについては、現時点で3億年前後存在しているとされます。
シリウスA、B共に元々巨大な恒星でしたが、主星だったシリウスBは寿命を迎え、大きさもこれまで程ではなくなりました。
それに伴いシリウスAが主星となったのです。ちなみに、現在の主星にもやがて生涯を終える時が来るのですが、今後7億年前後の事でしょう。
シリウスの超新星爆発とその影響
質量の大きい恒星は生涯を終える直前、「超新星爆発」を起こします。この大規模な爆発の可能性については、シリウスも例外ではないのです。
その場合、地球にどのような影響を及ぼすかが懸念されています。具体的には、爆発時有害なガンマ線が異常に放出される現象「ガンマ線バースト」が起き、大きな衝撃波が地球を襲うのです。
オルドビス紀の地球で起こった大量絶滅の原因は、このガンマ線バーストである可能性が高いです。
もし、シリウスが生涯を終える際に超新星爆発を起こせば、地球上のほとんどの生物は絶滅するでしょう。
しかし、この天体現象は質量の大きい恒星のみに起こる現象であり、シリウス程度の質量だと、このような現象は起こらないといわれます。
そもそもシリウスがその生涯を終えるのは遥か未来の事であり、およそ7億年後とされているのです。それまで地上に生き残っているかわからない人類が、超新星爆発の心配をするのは有意義とはいえません。
太陽系に接近中のシリウス
シリウスは今、太陽系に近付いてきており、それに伴い輝きをより増していきます。
しかし、6万年後には逆に太陽系から遠ざかっていくようになります。
そして、20万年を経過する頃には、シリウスは「地上から観測できる最も明るい天体」という地位から外れるでしょう。
宇宙の状態は常に変化するため、観測状況はその時々で変わります。シリウスBが主星だった頃、この天体全体の輝きは今以上のものでしたが、これが寿命を迎えると輝きは大幅に弱まりました。
いつの日かシリウスAからもその輝きが失われる事でしょう。
シリウスを観測する方法
オリオン座を基準に探せば、シリウスをその目で実際に見る事ができるでしょう。この星座の観測には、秋から冬の夜空がお勧めです。
空を見上げると、オリオン座を構成する3つの星が整列しているのがわかると思います。これらのうち、左端の星の真上に視線を向けると、オリオン座の恒星の1つベテルギウスが赤く輝いているのが目に入るはずです。
このベテルギウスとプロキオン、そしてシリウスを結んでいくと、冬の大三角ができ上がります。ベテルギウスの南東といえる位置に、ひときわ明るく輝くシリウスが見えるはずです。
目立つ星なので、見つけるのはそれ程難しくはないでしょう。
今回は巨大な恒星シリウスについてお話ししました。
あなたもこの冬は夜空を見上げ、実際にシリウスを見てみてはいかがでしょう?
コメント