20世紀の初めに発見されて以来、ブラックホールの正体がだんだんとわかってきました。
時を飛ばしたり、光を飲み込んだり・・・。
ブラックホールの存在にこれからも多くの学者が首をひねるでしょう。
そんな中、注目が集まっているのがブラックホールと対を成すホワイトホールです。
もしかしたら、ブラックホールより不思議かもしれません。
今回は、そんなホワイトホールをご紹介します。
ホワイトホールって?
その前に、ブラックホールとは何でしょう。
ブラックホールは極度に濃縮された質量が時空を歪めたときにできたものだと考えられており、強大な引力で物質はおろか光も飲み込んでしまいます。
例えば、死にゆく星が自重に耐えられなくなり超新星爆発を起こすと、ブラックホールになってしまう場合があります。
これに対してホワイトホールは全く逆の特徴を持つと言われています。
言うなれば、三次元ポータルでしょう。
しかし、ブラックホールの逆と考えると、物質も光もなにもない、無からできていることになってしまいます。
では、ホワイトホールはどのようにしてできるのでしょうか?
現時点で有力な説の一つによると、ホワイトホールはとても古いブラックホールであると言うのです。
長い年月をかけ全てを飲み込んできたブラックホールが、その溜め込んできたものを 吐き出したときにホワイトホールができるそうです。食べすぎて吐いてしまうのと一緒です。
だとすれば、ブラックホールに飲み込まれたものは無に帰るのではない、と説明がつきます。
物理学的にもこれで辻褄が合うのではないでしょうか?
でも、これで めでたしではありません。
ホワイトホールから吐き出されたものは「この宇宙」のものではないかもしれないのです。
別次元の宇宙をつないでいる?
ブラックホールには「シュバルツシルト面(或いは『事象の地平線』)」というものがあり、飲み込まれた物質や光はこの境を超えると二度と現宇宙には戻ってこられなくなってしまいます。
この境を超えてなお飲み込まれていく物質や光は「特異点」に収束し、対になっているホワイトホールから放出されると考えられています。
しかし、「どこにでるか」はわかりません。
もし、あなたがブラックホールに飛び込んでどこにでるか試してみても「特異点」でくしゃくしゃにされてしまうので確かめようがありません。
だとしても、遠くの宇宙まで飛ばされることを考えると、とても興味深いですよね。
しかも、ただ遠いだけじゃなく、別次元の宇宙に飛ばされているかもしれないのですから。
ブラックホールとホワイトホールはアインシュタイン – ローゼン橋、通称ワームホールで繋がっていると考えられていて、別宇宙への物質・光の転送を可能にすると考えられています。
残念ながら、物理学者いわく、我々がいる現宇宙の二点をつなぐのではなく、この宇宙とは全く別の宇宙に繋がっているそう。
さらに、全く別の時間に繋がっているとか・・・?
タイムトラベル
もし ブラックホールとホワイトホールをワームホールがつないでいるのだとすれば、時間の進みを変えたりさらには逆光させたりすることもできるかもしれないと、一部の物理学者は言います。
皆さんご存知「相対性理論」によれば、物質の移動速度が速くなればなるほど、その物質にとっては時間の遅れが生じ、俗に言う「ウラシマ効果」が観測されます。
これはジョセフ・ハーフェレとリチャード・キーティングの実験でも証明されています。
彼らは精巧な原子時計を複数個用意し、いくつかは土に埋め、いくつかは航空機に乗せ世界各地を飛び回らせたところ、航空機に積まれた原子時計は土に埋められた原始時計よりも、数ナノ秒多く時を刻んでいました。
他にも、NASAの「双子研究」によれば、国際宇宙ステーションに滞在した宇宙飛行士スコット・ケリーは、その間地球にいた双子の兄弟よりも8.6ミリ秒老化速度が遅かったそうです。
この理論に当てはめて考えると、光の速さでワームホールを通過すれば老いることなく、未来の彼方までタイムトラベルすることができるのです。
また、ワームホールの一端を加速させて、もう片方を静止状態にさせることができたら、加速させたほうは静止しているほうよりも時間の進みが遅いと言えます。
例えば、もし双子の赤ちゃんを加速させた方と静止している方に一人ずつ置いたとしたら、加速した方にいる赤ちゃんが 4歳になる頃には、もう片方にいる赤ちゃんはなんと12歳になっている計算です。
そして もしこの12歳になった赤ちゃんが加速した方にいる4歳の赤ちゃんに観測しようとすると<自分も8歳若返ることになります。なにがなんだか、ですよね。
ホワイトホールと宇宙の起源
先ほどホワイトホールはとても古いブラックホールであると言いましたが、そのふるいブラックホールが、いつホワイトホールになるのかについては、まだ言及していませんでした。
ブラックホールがホワイトホールになってしまうのは、ブラックホールが限界まで濃縮して「ビッグバウンス」と呼ばれる反発が起きた時であると言われています。
この理論を辿ると、二つのとても興味深い可能性が見えてきます。
まず一つは、これまでに発見されたブラックホールはもうすでにホワイトホールになりかけているかもしれないということです。
一部の科学者は、ガンマ線バーストや他の宇宙線などはホワイトホールが生まれる際に放射されると考えており、2006年当時ホワイトホール候補であった天体からも GRP060614 と呼ばれる 異常なガンマ線バーストが観測されました。
通常、ガンマ線バーストはほんの数秒間しか続かないのですが、この天体からは約2分間に渡り観測されたのです。11年前のこの瞬間にホワイトホールが誕生したかもしれません。
誕生といえば、ホワイトホールは宇宙の起源と密接な関係にある可能性があります。
「ビッグバウンス」によってブラックホールの中身がホワイトホールとして放出される様、それは我々のよく知る「ビッグバン」に酷似しています。
宇宙はブラックホールがホワイトホールへと変化した時にできたのかもしれません。
もしそうだとすれば、我々の宇宙がそのうち終焉「ビッグクランチ」によって収束し、「ビッグバン」でまた膨張するというのは本当なのかもしれません。
ビッグクランチとは?
ここでは、おまけとして宇宙の終焉として知られる説の一つ、『ビッグクランチ』についてお話ししましょう。
『ビッグクランチ』とは、宇宙の膨張が終息 収縮し、ビッグバンの時と同じ一点に戻って、終わるとされる説です。 これは、インフレーションの逆で、一気に縮小する現象のことです。
もし、ビッグバンの時間的逆転といわれる『ビッグクランチ』により、この宇宙が極小の特異点に収縮され終焉を迎えたとしても、必ずしも宇宙の終わりを意味することにはならないと考えられます。
宇宙は『ビッグバン』で始まって『ビッグクランチ』で終わるとされるサイクルを、永遠に繰り返していると考えられています。
しかし、この説は近年 懐疑的な見方をされることが多く、研究者によると「宇宙の拡大は減速どころか、その拡大が加速しているといわれています。
ブラックホールとホワイトホールをワームホールがつないでいると考えると、全ては同一のものなのでしょうか?とはいえ、次元に縛られずに存在することは可能なのでしょうか?これらのことが分かれば、いつの日かタイムトラベルも可能になるのかもしれませんね。
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