太陽から2番目に近い惑星、金星。地球の姉妹惑星とも呼ばれ、その性質の近さから「金星には生命が存在しているのではないか」とも言われており、謎の多い惑星です。その謎の一つである、金星を取り巻く暴風「スーパーローテーション」について新たな事実が判明しました。
日本が送り出した金星探査機「あかつき」のデータによって、その原因が明らかになろうとしているのです。さて、暴風の謎を解き明かす前に、まずは金星の基本的な情報をおさらいしましょう。
金星の特徴
金星は地球の隣、太陽から2番目に近い場所に位置する惑星です。そのため気温や気圧は地球より遥かに高く、どれくらいかというと、探査機を送り込んでも潰れてしまうほどです。
また、表面が白く分厚い「アルベルト」と呼ばれる雲に覆われており、光が強く反射します。金星の見た目が白く光っているのはこのためです。この雲により、外側から地表の様子を伺うことはできません。
つまり、外からも中からも調査をするのがとても難しい環境だということがわかります。謎がたくさんあるのもうなずけますね。
これだけ聞くと、地球とは似ても似つかない星のように思えますが、ではなぜ金星は地球の姉妹惑星と呼ばれているのでしょうか。
金星に住む生命の可能性
地球と金星には、似ている点が主に二つあります。それは、大きさと重力です。それに加えて、地上から50キロメートルほど離れてしまえば、なんと大気圧や気温も地球とほぼ同じになるそうです。これは、現在発見されている惑星の中で最も地球に近い環境と言われています。これだけ地球に似ているのなら、生命が存在していてもおかしくないような気がしてきますね。
しかし、地球と金星には決定的な違いがあります。それは、大気の成分です。金星の大気は、ほとんどを二酸化炭素と硫酸が占めています。これでは生物がいたとしても呼吸ができないでしょう。
ただ一つだけ、わずかな可能性として微生物の存在が考えられます。実は金星の二酸化炭素と硫酸が含まれる大気は、地球の火山帯とよく似ています。地球の火山帯には、二酸化炭素を食べ硫酸を排出して繁殖する微生物が存在しているのです。
つまり、金星の大気中にも微生物が存在している可能性は十分にあるということです。これらの、地球に似ている要素こそが「金星に生物は存在しているのか」という謎を謎たらしめているのです。
雲に現れる黒い斑点
ここからは本題である、「金星を取り巻く暴風」について謎を解明していきましょう。
冒頭でお話しした、金星を取り巻く雲「アルベルト」には黒い斑点が見えます。この斑点が、微生物ではないかと長年言われてきました。これが微生物であることが証明されると、「金星には生物が存在するのか」という長年の謎が解き明かされることになります。そのため多くの国々が探査機を送り、この黒い斑点について研究をしてきました。
すると、この黒い斑点と「スーパーローテーション」にまつわる面白い事実が明らかになったのです。
金星を取り巻く暴風「スーパーローテーション」
スーパーローテーションとは、金星を取り巻く帯状のジェット気流のことです。秒速100メートルを超え、自転の60倍の速さで流れています。この暴風が起こる原因が、金星の雲に存在する黒い斑点、その斑点が吸収する太陽熱が原因である可能性が非常に高いことがわかりました。
この発見は、金星の謎の一つとされていた「スーパーローテーション」の原因解明だけでなく、「金星には微生物が存在しているのか」という謎の解明をも進展させています。なぜなら、金星の雲に存在する黒い斑点は光吸収特性があることがわかり、つまり地球の微生物と同じ大きさで同じ性質を持つということが明らかになったからです。
金星探査機「あかつき」
今回ベルリン工科大学の研究チームが明らかにしたこの新事実、研究を支えたデータの一つには、日本の探索「あかつき」の観測データが含まれています。あかつきは火星探査機「のぞみ」に続く、三番目の惑星探査機です。6年に渡る開発期間ののち、2010年に打ち上げられ現在もその成果をあげ続けています。
JAXAによる特設サイトにあかつきの近況報告が随時更新されているようです。今後も多くの金星の謎を解き明かすために、重要な存在となるでしょう。
金星の謎はまだまだ尽きません。生物なんていないと思われていた隣の星に、生物がいて、しかも爆風を巻き起こしているかもしれないと思うと、なんだかワクワクしますね。とはいえ、金星の黒い斑点が微生物なのかどうかはまだ不明です。これから先、もしかしたら私たちの予想とは全く違う事実が明らかになるかもしれません。日本の探索チームの活躍にも期待です。
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