全知全能の最高神であるゼウス、ギリシャ神話における主神です。
人類と神、双方の秩序を守護し、支配する神々の王であり、彼が放つ雷は全宇宙を完全に破壊できるほどの威力を持っているとされ、その絶大な力はまさに最高神という名にふさわしい神と言えます。
さて、人の世界と神々の世界双方で絶大な影響力を持ち、天候を操るという強大な能力を持っていることから、ゲームやアニメなどでもよく取り上げられるゼウス。
全知全能の神ということで、お堅いイメージを持つ人も多いかもしれませんが、実は彼にも多くの知られざるエピソードがあるのです。
今回のLALALAミステリーは、そんなゼウスにまつわるエピソードをご紹介します。
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ゼウスの圧倒的な力と最強の武器
全宇宙を支配し、天空を意のままに操ることができるゼウスは、大雨や雷、雪なども自在に降らすことができたと言われています。
ゼウスが手にする武器「ケラノウス」
ケラノウスとは「雷光」を意味する言葉で、名前の通り素手で雷をつかむような形で描かれることが多い武器です。
その威力はアポロンやオリュンポスが属しているオリュンポス十二神の中にすら肩を並べるものがないと言われており、たった一撃で全宇宙を破壊させてしまうほどの威力とされています。
ケラノウス以外にもゼウスは「アダマス」という名の、切れないものがない魔法の鎌を持っている他、守りに関しても「アイギスの肩当て」と呼ばれるケラノウスの攻撃すら防いでしまう防具を身につけていたとされています。
実は女性関係にだらしない絶対神
紀元前8世紀頃の吟遊詩人であるホロメスが描いたゼウスは、弱者を守る正義と慈悲にみちあふれた素晴らしい神とされていました。
さすがは絶対神と思ってしまいますが、実は女性関係にだらしなかったともされており、妻以外の女性と何人も子どもを作ってしまったり、浮気がバレないようにさまざまな策を画策したりする姿も描かれています。
恐怖の神としての顔
慈悲にみちあふれていたとされている反面、自身の定めた秩序を守らない者には徹底的な罰を与えようとする恐怖の神としての側面もあります。
それこそ、ゼウスにとって気に食わない者がいれば、問答無用で対象を草や島に変えてしまったとも言われているほどです。
ちなみに、これらのゼウスにまつわる伝説は、天空神信仰を持つ太古のインド・ヨーロッパ部族と、母神・女神信仰を持つその他の部族の神の伝説が合わさって生まれたのではないかと考えられています。
ゼウスの奇妙な家系
ゼウスが絶対神になる過程を見るとわかるのですが、ゼウスの家系にはさまざまな問題があったのです。
ゼウスは「巨神族クロノス」と「大地の女神レア」という親族の末っ子に生まれたと言われています。
末っ子ということで当然兄弟もおり、兄に「冥府神ハデス」と「海と地震の神ポセイドン」という有名な神がいます。
父のクロノスは巨神族タイタンの長であり、全宇宙を支配している神々の王でした。
ちなみにクロノスは女好きでも有名な神でもあります。
ゼウスは父を倒すことで絶対神となった
クロノスは性悪男としても有名で、宇宙支配の前任者だった「天空神ウラヌス」を神々の世界から追放したり、子どもたちに権力が奪われないように、レアとの間に子どもが生まれるたびに丸呑みにしてしまうなどの悪事も働いています。
クロノスが子どもを丸呑みにする事態を良くないと考えたレアは、生まれたゼウスを石にすりかえたことで、ゼウスはクロノスに食べられることがなく生還できました。
そして成長したゼウスはクロノスと巨神族を打ち倒し、同時にクロノスに呑み込まれていた兄弟たちを吐き出させることに成功したのです。
クロノスから兄たちが吐き出され、兄たちとの優劣が入れ替わったことでゼウスは長男になると同時に晴れて絶対神になったのです。
ゼウスは妻を丸呑みにして「全知」になった
ゼウスは女性関係にだらしないと書きましたが、その性格ゆえに結婚相手も幾度となく変えています。
ゼウスの最初の結婚相手は「知性の女神メティス」でした。
メティスはゼウスの父だったクロノスが率いていた巨神族の一員だったのですが、一族を裏切ってまでゼウスを支えていく心優しい女神です。
しかし、ゼウスの祖母であるガイアが「メティスとの子がゼウスを超える神になる」という予言をすると、まずいと感じたゼウスがメティスを丸呑みにしてしまうのです。
この事件により、ゼウスはメティスの知恵を自らのものにしたことで「全知」を手に入れたのです。
二人目の妻は浮気の末に離婚していた
ゼウスの二人目の妻はクロノスの兄妹だった「掟の女神テミス」です。
ゼウスとテミスは「運命の女神モイライ」などの3人娘を授かることになります。
このモイライは実は神すら屈服させる運命の力を持つ「夜の女神ニュクス」の転生体だったのです。
つまりゼウスは運命すらも従えることができたのです。
しかし、これで終わらないのがゼウスのすごいところです。
彼は次に最高位の女神であり、貞節をつかさどる「結婚の女神ヘラ」に目をつけます。
浮気がバレたくなかったゼウスは、カッコウに姿を変えてヘラのもとに向かい、そして結婚しました。
その後、ゼウスはテミスと離婚してしまうのでした。
ゼウスには隠し子がいた
ヘラとは「炎の神パイストス」と「戦の神アレス」という子どもを授かります。
しかし、これでもゼウスの浮気癖は続いてしまい、不貞を許さなかったヘラは愛人やその家族に非情な罰を与えていきます。
そんなゼウスの愛人の中には「女神官イオ」もいました。
彼女はヘラの罰によりエジプトの地まで追いやられてしまい、後にエジプト王になるゼウスの隠し子である「エパポス」を出産します。
この一件の後にイオは「豊饒の女神イシス」と呼ばれるようになります。
その他のゼウスの愛人たち
数多くの愛人がいたゼウスですが、中には人妻だった女性もおり、その女性の名前は「レダ」と言います。
彼女との間には「ヘレネ」と「クリュタイムネストラ」という二人の娘を授かることになります。
ちなみにヘレネは絶世の美女だったようで、これを大変喜んだゼウスは宇宙に「はくちょう座」を創ったそうです。
他の愛人には「大地の女神エウロペ」
彼女はヨーロッパの名前の由来にもなった偉大な女神で、ゼウスとの間には後のクレタ島の王となる「ミノス」などの3人の子どもを授かっています。
ゼウスだったと考えられている神たち
ゼウスはエジプト神話での「最高神アメン」と同一人物ではという説があります。
アメンが神々の世界の統一者であったことからゼウスのエジプトでの名称がアメンではないかという解釈がなされているのです。
エジプトにあるアメン宮殿にはギリシャ神話の「英雄ペルセウス」や「英雄ヘラクレス」が訪れたという伝説も残っているので、信憑性は意外と高いのかもしれません。
また、ローマ神話の「最高神ユピテル」も実はゼウスではないかと言われています。
ユピテルは最高神でありながら雷を操る全農の天空神で、能力が似ているだけでなく、ゼウスと同じく倒した敵の武器や防具を聖木にささげていたという共通の伝説もあることから、同一人物説が濃厚であるとされています。
ゼウスにまつわる神話がこのようなややこしい構図になってしまった原因として、古代ギリシャは都市国家郡にまとまりがなく、それぞれが立場を持ってときには対立することもあったとされています。その結果、神話が都市ごとにバラバラな神や英雄の先祖であるとして崇められました。それぞれの都市がゼウスを先祖であるとして、都市ごとのさまざまな神話を重ねてしまった結果、ゼウスですら覚えるのが難しいほど多くの子を持ってしまったのです。もしかすれば、浮気性ではまったくなく、本当に絶対神として君臨するにふさわしい神だったのかもしれませんね。
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